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従業員22名が亡くなったーテラドローン・インドネシア火災に重大な疑惑

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日本の農林水産省の「東南アジアにおけるスマート農業の実証支援委託事業」に 採択されているテラドローン・インドネシアの本社ビルで、12月9日に火災が発生。 従業員100人規模のオフィスで、22人の従業員が死亡するという大惨事があった。 火災が発生したのは都心の住宅密集地帯、大通り沿いに立ち並ぶ、 隣と壁を共有する店舗街の一角。 収益を最大化しようと階数を増やしたり、道路側に迫り出したりという、 よくある改築の施された建物。 それでも安全基準条件が厳しくなるので4階建て以上にはしないのが普通だが、 この会社が入居していた建物は、周囲と比べても、 ひときわ高く目立つ7階建てだった。 火災が発生したのは、昼休み中。従業員の多くが建物の外に出ていた時。 爆発音があって、火事だ!火事だ!という声で火災の発生を知ったという。 火災の原因は、サービスカウンターとして使用されていた1階の倉庫に 置かれていたドローンのバッテリーからの出火と報道されている。 ニュースでは、灰色の煙に包まれ、屋上の鉄柵に張り付くようにして、 助けを待つ従業員たちの姿が写し出されていた。 この建物の出口は、火災発生現場の近くの扉一つだけ。 煙は建物の中央にある階段を伝って一瞬のうちに上階へと広がった。 非常階段も、スプリンクラーも、アラームもない中、 階段を上る途中で、有毒な煙を吸ってしまった人や、 はめ殺しの強化ガラスをなんとかたたき割ろうと試行錯誤しているうちに、 猛毒な煙を吸い込んでしまった人。 救助隊の証言によれば、被害者の殆どは、各階で窓の傍で 折り重なるようにして倒れていたという。 昼食の休憩の時間。外出しなかった、被害者の殆どが女性だった。 その中には妊娠7カ月の妊婦もいた。 さらに、単位取得のための研修をしていた大学生もいる。 ほとんどが20歳代だったというのも痛ましい。 大学を卒業しても働き先がないという慢性的な 就職難の中、テラドローン社のような、最先端のテック業界で働くことは 夢、憧れの実現であったことだろうに。 そんな有望な若者たちでさえ、スプリンクラーもアラームもない、 非常階段もない、ローテクな違法建築の犠牲者になってしまうという現実。 この会社は、オフィスについてはレンタルで、コストダウンを優先していたようだが、 扱う案件は、国家的な大プロジェクトとして力を入れている分野の大物...

ジョコ政権下で進んだニッケル採掘の終焉?国軍演習で露呈した違法空港の闇 

中国政府のベルト・アンド・ロード構想の主要プロジェクトの一つ EV車のバッテリー用のニッケル採掘場となったスラウェシ島。 その中部には、その拠点である中国資本の巨大な工業団地 がある。 工業団地の中には、学校や病院があり、 数万人といわれる中国人労働者のための宿舎、発電所、病院、学校、警備まで 企業が一体運営、 ミニ都市状態。 インドネシア人労働者が作業中に事故があっても内部で処理され、 暴動が発生したときも、インドネシア警察は中には入れてもらえなかった。 問題が洩れないように管理され、警察も行政も全く立ち入ることのできない 実質的な”治外法権地帯” 10年前、圧倒的な支持を得て大統領に就任したジョコ大統領は 「鉱石をそのまま輸出すれば、外国の利益になるだけ」 として、鉱石の輸出を禁止、鉱物が欲しければ「インドネシア国内で 精錬して、現地人を雇え」という方針で、鉱物業界は大きく転換した。 しかし、その方針の結果、国内に精錬工場を建設したのは 中国資本ばかり。 政府は、工場法人税30年免除、物品税・輸入税の免除など 様々な優遇策、を提供し、ニッケル鉱山開発を 優先的な国家戦略プロジェクトとして推進した。 環境汚染というリスクを受け入れてでも 外資を呼び込むのだという政府の大義名分は 国内産業を育成すること、現地住民に雇用先を提供すること だった。 ところが、実際は大量の中国人現場作業員が就業し それが現地作業員との紛争の原因にもなっていた。 ”外国人労働者は、高度な技術者だけ”という約束だったはずが、 いつの間にかその人数は、数万人にも上る。 大量の中国人労働者は、どこから入国してくるのか? その謎が、最近になって明らかになった。 この工業団地のすぐ近くに空港があるが、 入管も通関もなしに運営されていたのだ。 このことは、11月末インドネシア国軍がこの空港近くで、 軍事演習を行ったことで明らかになった。 そのときの様子を一部始終を撮影した映像によると、 グリーンのライン、IMIP(工業団地の名前) と書かれた 飛行機が駐泊し、”プライベート空港”と書かれた看板が建っている。 #Bandara Ilegal di Morowali  この飛行機が、企業本社のある中国沿岸部の都市との間を往復し ビザなし、通関なしで、違法に作業員、おそらくは物資も ノーマークで運び...

財産没収?デノミにかける国民の期待とは

通貨の桁が多いインドネシアでは、最高額面の紙幣が10万ルピア。 これは、日本の円の感覚でいえば千円札が最高紙幣のようなもの。 20年くらい前、住み込みのお手伝いさんに支払う給料の相場は、 二十万ルピアくらいだった。でも現在はもう、それは日給程度にすぎない。 十万ルピア昔は1万円札ぐらいの価値があったけれど、 現在はもう円感覚の千円札と同じくらいしかない。 1000ルピア以下で買えるものなんてほぼないし、 1ルピアになったとしても表示が変わるだけなら 別に問題ないように思える。 膨大な「ゼロ」の数は旅行者でなくても紛らわしい 会社や銀行では特に、この桁数の多さが複雑な問題になっている。 日々の業務で使う簡易版と、正式な資料の二つを維持しなければならないことや、 データ容量が大きくなり速度やエラーの原因になったり、 桁数を維持するだけのための容量を維持するコストもかかるそうだ。 インドネシア中央銀行が、デノミの検討を提案し続けてきたというのも最もな話。 実務的な利点にとどまらず、国際的な取引の場では、 桁数の多い通貨は、”経済が遅れている”というネガティブなイメージがあり、 これを刷新し、 国際的な信用を上げるためにも、デノミを実施したいという。 ゼロの数が減ったという心理的効果によって、 特に家などの高額品の分野で消費を押し上げる一時的な経済効果も期待できるそう。 『デノミは資産没収と同じだ』などと言う人もいるけれど、 価値が変わるわけではなく、新しく発行されるお札の表示が変わるだけで、 新旧両方のお札の価値に合わせた価格提示が保証されるなら、 トルコリラやロシアルーブルのような経済成長につながる成功例もある。 失敗例で有名なのは、ベネズエラ。2008年から3回に渡って14桁を切り下げ。 日用品ひとつ買うにも、札束を積まなければならないほど下落した 通貨の価値を立て直すために行ったデノミが、益々信用を失うことにつながり、 さらに通貨価値が下落した。 ジンバブエの場合は、2008年に10桁、2009年には12桁を切り下げ、 それでもインフレが止まらず通貨停止。 こういう失敗例では、元々もうダメなところに デノミがさらに追い打ちをかけ”資産没収のようなもの”になる。 インドネシアでも、かつてデノミに失敗した経験がある。 それは、1965年、初代大統領の スカルノ政権下で、...

インドネシアジャカルタバンドゥン高速鉄道に責任追及の動き

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”ルートの距離が短すぎる。短距離では高速鉄道は必要なく、既存の路線で十分です。利益よりも不利益が多くなるでしょう” ジャカルターバンドゥン高速鉄道プロジェクトが、経済的に非採算性が高く、また規制の要件を満たしていないとして、真っ先に反対意見を表明した、当時の運輸大臣イグナチウス・ジョナン氏。 その後、この案件は交通省ではなく、国有企業と中国の案件としてすすめられ、ジョナン氏は、2016年1月の起工式に出席しないことで反対の意志を示し、着工許可の発行に関しても基準を緩めないことなどにより、断固として反対した。 ジョナン大臣は、第一次ジョコ政権の大臣の中で、スシ漁業大臣と並んで国民に人気のあった人物。国営鉄道会社PT KAIのCEO時代に、会社の体質やサービスを劇的に改善させたことで知られ、誠実な人柄で知られていたが、やはりその通りだったと惜しまれながらも、半年後の閣僚改造でジョナン氏は運輸大臣から解任された。 ジョナン大臣が解任させられた後、大統領宮殿に呼び出された、公共政策アナリストのアグス・パンバギオ氏は、そのときの大統領との会話について次のように証言している。 「採算がとれません。国家に損害を与えることになるでしょう」と警告すると、大統領は「赤字にならないようにできるよ」「ハイテク技術だし、この国にとって必ず良いものになる。中国政府のサポートがある」 「このアイデアは誰からでたのですか?」と尋ねると、大統領ははっきりと 「これは私のアイデアだ」と答えたという。 周囲の意見を全く受け付けなかったジョコ大統領の当時の様子。さらに、複数の専門家がこの問題を取り上げ、発注金額が他の中国企業の海外での高速鉄道建設費と比較して、「3倍もの値段で計算されていた(水増し)されていたこと、費用が膨らんだ最大の要因となった ルート変更と土地収用費用の激増は、ジョコ大統領と近い関係にある企業家に利益をもたらしたことについても、議論されている。 これまで一部の批評家が追及するにすぎなかった、ジャカルタ―バンドゥン高速鉄道プロジェクトの巨額の負債に関するニュースにこれほど注目があつまっているのは、利息を含む負債の支払いがいよいよ本格化することから。 そんな中、来年度の予算会議では、プルバヤ財務大臣が、「債務返済について、政府がその責任を負うべきではない」原則を表明した。 プルバヤ氏という...

インドネシア産冷凍エビ セシウム汚染検出される

アメリカ上院本会議では、映画「エイリアン」の画像をモニターに写しだして、 当局の対応が生ぬるいと厳しく批判していた。 「外国のエビは、アメリカの基準に従っていないから食べたら 『エイリアン』になってしまうかもしれない。 少なくとも、耳がもう一つ生えてくるかもしれない」 アメリカ国内の主要港でインドネシア産の冷凍エビから、 放射線が検出されサンプルを検査の結果、低レベルのセシウム137が検出された。 サンプルの検出値は68Bq/Kg、米国FDAの介入レベルは1,200Bq/Kg、 下回っていればよし 、というわけではなく、 生産加工された環境の確認が必要なのだそう。 連絡を受けてインドネシア政府が調査した結果、 問題の海老を輸出した加工工場B社の工場付近で 放射能汚染が検出された。 その情報に基づき、 ’不衛生な条件下で加工されたもの’として B社が加工・出荷した輸送中の439コンテナーを含む、 冷凍エビは全て ジャカルタ港に送り返されることになった。 莫大な量だ。セシウムはそのすべてから検出されたわけではないそうだけれど、 B社はレッドリスト入り、この会社の全エビ製品に対する輸入警告が発出された。 経済調整大臣はこの件について 「超微量、基準値より全然低い 」と答えていた。 インドネシアの海老輸出先の7割近くがアメリカ向け、 その次が日本、中国。 国内消費量は1桁にも満たない。 439コンテナーもの冷凍エビは、国内の年間消費量の何倍にも相当し、 国内では消費しきれない。別の国と交渉して 再輸出するしかないのだが、 これだけ世界中で話題になっている中 アメリカに拒否された大量の冷凍エビはどこへ消えることになるのだろう。 18コンテナーが既にB社に戻ったということと、 問題のあった5コンテナーがまだ港にあり、 439コンテナーはまだ輸送中だということしか 今のところ分からない。 微量の汚染... これまで全くなかったのかということが 疑わしいような感じがしてならない。 汚染のあったB社は、首都ジャカルタから1時間程度のところにある工業団地。 この工業団地には250社もの、食品、化学、金属など多岐にわたる工場が稼働している。 港へのアクセスのよいところから、輸出企業が多く入居している。 最初に放射能汚染が検出されたのは、B社 から3キロ離れた工業団地の周辺にある、 鉄リサ...

お米が消えていたのは日本だけじゃなかった

最近お米が美味しくなくなったなあと思って、土鍋で炊いてみたり、ブランドを変えたり色々試していた。そりゃあ日本のお米みたいなわけにはいかないけど、数年前ごろのお米はまだギリギリオニギリの形に固めることもできた。 でも最近のお米は、直ぐバラバラになってしまって、それでいてナシゴレンにしてもくっつきやすくて困る。ナシゴレン、つまりチャーハンにするのが、最終的なお米の救済方法だというのに。 もっと美味しいお米はないものかと思うものの、去年の中頃から2割も値段が上がったし、お米が買えないなんていうニュースも一時期あって、 日本みたいに価格が倍になるまではいってないし、買 えるだけでもありがたいものだと思うことにしていた。 ところが今月、そんな謙虚な庶民の理解心を踏みにじるようなニュースがあった。 農業大臣の市場調査で、店 頭の5kgプレミアム米の殆どが、プレミアムの条件を満たしていなかったということが’発覚した。 プレミアムといっても、これが標準レベルのお米で スーパーのお米はどれも同じような値段だし、 古米、古古米は、普通、別のルートで売られているものという認識。 市場で計りうりのお米もあるけれど、殆どの一般家庭では、スーパーやコンビニで5kg包装のお米を買うのが普通 。 ところがその プレミアム米と書かれたお米の8割が、中身は古米、古古米を混ぜて、又は中身を入れ替えただけの、プレミアムの標準を満たしていなかったということがわかった。 サニア、ラジャ、ウィルマー、フードステーションなんかはジャカルタ市の公営企業なのに。 これじゃあ、どれを買ってもおいしくないのは当たり前だ。 農務大臣によると,、 農家からの買い取り価格が下がり、精米所からの値段も下がっているのに、消費者価格だけが上昇している。米の生産量は過去7年間で最高の収穫量があり、米の在庫が増えているにも関わらずだ。 そこで農業省が行った268ブランドの米のサンプル検査、民間検査機関での検査の 結果、 212ブランドが標準を満たしていないことが明らかになった。 農業大臣は、改善の為の猶予期間を与えたとのことで、この基準を満たさないプレミアム米は、今でも店頭に並んでいるからややこしい。 例えば、このニュースを検索していてあやまってオンラインショッピングのリンクを押してしまうと、その問題のお米の購入ページに飛んでしまうなど...

ユネスコ指定公園でニッケル採掘という超愚策‐ EV車ビジネスの自然破壊力

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                                                                       Oleh I Made Adi Dharmawam - Karya sendiri , CC BY-SA 4.0 , Pranala 世界中の珊瑚の宝庫、絶滅危惧種の生息や貴重な海洋生物が生息する秘境、 世界的なダイビングスポットとして名高いラジャアンパット諸島。 インドネシア 西パプア州の北西端に あたるこの、 真っ青な海に点々と並ぶ小さな島々からなる自然公園は、ユネスコ世界ジオパークにも指定されている。 そんな貴重な世界の財産、最後の楽園で、なんと・・・・ニッケル鉱山採掘が操業していたということが発覚した。  環境保護団体提供の空からの映像によると、森林が伐採された赤土の上をショベルカーが何台も忙しく動き回っている。小さな島だけにその真っ青な海がすぐ近くに見えるような場所だ。 そして鉱物を運び出すための運搬船は、目立たないように自然公園側から見えない位地に停泊しているが、沿岸部はすでに茶色く濁っている。 ラジャアンパットの意味は、4つの王という意味で、無数にある小さな島の中で、最も大きいこの4つの島が地名の由来になっているが、その4つの島を含む複数の島が、現在、ニッケルの採掘場になっているという。 ラジャアンパットを救え!  資源開発省のイベント会場で、副大臣が演説している最中に、プラカードを持った環境保護団体がなだれ込んだことがニュースで報道され、大炎上のきっかけとなった。そして資源開発大臣自らが、驚いた(ふりをして)現地視察にまで出かけなくてはならなくなった。 視察から戻った資源開発大臣は早速、 4社の事業権を即、停止したと発表した。その中には案の定、汚水を海に垂れ流しにしていた企業もあった。 但し、国有企業Aの子会社一社だけが、何故か事業許可剥...

ソフトバンク撤退後どうなったヌサンタラ新都市移転計画

年に一度の大型休暇大祭明け休暇が終わった。今年は不景気・購買力の減退を反映して、昨年より24%減少、ホテルレストラン協会によれば宿泊率は昨年より二割減だったという。そんな中でも国内の観光地はどこも例年通り賑わっていたそうで、中でも新しい観光地として今年話題になったのが、建設中のヌサンタラ新都市移転計画地。 人口過密や渋滞が深刻化したジャカルタにある省庁などを移転させるとして2022年に着工された場所は、西カリマンタンの何もない僻地。森林を切りひらいて電気も水道も空港も道路も一からすべて建設するという途方もないプロジェクトの現在は、当初から懸念された通りの結果になっている。 昨年8月には一応、独立記念日の式典が行われたものの、9月に一部の政府機能が移転するという話は延期になり、10月に政権交代があったあと、やっぱり首都はジャカルタに戻すという内務大臣による発表があった。さらに新政権は予算の効率化のためとして、2025年度の省庁や地方自治体への予算を大幅に削減、今年の公共事業省の予算は7割も削られた。 ”官庁の無駄な支出をカットして、国民のために使用するのだ”という大統領は言ってはいるが、実際は省庁によって大幅に予算が削られる省とそうでない省といった偏りがあって不透明な決定、削られた省庁も地方も、ただ受け入れる他ない状況だった。 ジョコウィドド大統領は、インフラ開発で経済発展に貢献した、ということになっているけれど、気づいてみれば、バンドン高速鉄道のような収益に繋がらないプロジェクトばかり。 前任のユドヨノ大統領時代に2600兆ルピアだった政府の借金は、ジョコ大統領の十年間で8000兆ルピアにも膨れあがり、今年からその支払いが開始する。 当初、10年前はマスコミの報道に乗せられて庶民の味方だとして大人気だったが、とんでもない疫病神だったことが後になってわかってきた。実は国営建設企業の負債を合わせると、実は、国の借金は12,000兆ルピア超えているという。 このキーワードで検索すると、デジタル情報省によるHoax(偽情報)説明が真っ先に出てくるので確認できないけれど、国営建設企業の負債が膨らんでいることや、支払ってもらえない国営建設企業の下請け中小建設会社の話などの暴露話ならいくらでもある。 ”お願いだから払ってください。家ももう銀行に差し押さえられました女房と子供がかわ...

ショベルカー2千台上陸で消滅危機最後の楽園 バイオ燃料促進の行き先 

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縄文時代の終りは、狩猟採取から稲作を中心とした生活スタイルの変化に関係するというけれど、インドネシアのパプア州には現在でも、狩猟採取で自給自足の生活を送っている300もの部族が存在する。 彼らの主食は、サゴヤシ。熱帯雨林のジャングルの中のいたるところに生息し、切り倒した後の根から新芽が出てくるから、植え付けも必要なし。天候に左右されず、肥料も農薬もいらず、草刈もりもいらない。 サゴヤシから取り出した澱粉を水で溶いて葛湯のようにして、魚のスープなどを添えて食べる。グルテンフリーで消化がよい、血糖値の急激な上昇を抑えるなど、身体によいことばかり。ご飯とは違った満腹感があって、胃の負担が軽い。 そんなお粥みたいな食事、病人でもあるまいし、と思うかもしれないが、伝統的にサゴヤシを主食とするスラウェシ州のマルク人は、精神的にも肉体的強靭、優秀な兵士であったことで知られている。 1本のサゴヤシから100キログラムの澱粉がとれる効率の良さ。異常気象やら農業労働者の不足などに左右されない。サゴヤシを主食としている限り、買い占められることもなく、価格の高騰に苦しむこともない。 気候変動、食料不足が社会的懸念がこれからますます深刻化するであろうといわれる現代ににあってサゴヤシ澱粉が、脚光を浴びるのであればどんなにいいことだろう。しかし、サゴヤシの生息する熱帯雨林のジャングルは、鉱物資源採掘や油ヤシ農園への転用などによって激減の一途をたどっている。 インドネシアの法律では、熱帯雨林は伝統的な生活する人たちのために保護しなければならず、開発は環境への影響を考慮して慎重に行わなければならない。しかし、法律の抜け穴をついて経済的な利益を独占しようとする事業家が昔から後を絶たない。 アブラヤシ油は、世界で最も安い低価格の油、スナック菓子やチョコレート、アイスクリームやマーガリン、調味料や石鹸、ボディソープや化粧品など、植物性油脂として世界各国の工業原料として確実な需要がある。 低価格の理由は、単位面積当たりの集油量が高いこと、手間をかけずに大量に収穫できる。そして輸出による収益が期待できることから、資本家/政治家はより広い土地を占有しようとし、自然保護区の森林に手を伸ばす。 一時期深刻な問題だったシンガポールで深刻な煙害(ヘイズ)を度々発生させるカリマンタン島やスマトラ島の森林大火災が、貧しい農...

大橋を渡ったらそこはC国だった 血も凍る土地収奪キャンペーン

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ジャカルタ西沿岸部の大橋を渡り終えると、そこはまるで別の国のよう。大通り沿いは完成したばかりの全く新しい大型の建造物が整然と並んでいて、一般庶民の移動手段であるオートバイ一台走っていない。右を見ても左を見ても看板の文字が全てC国語だけであるところをみると、ここはインドネシア人向けの街でない。 日本やシンガポールでもC国人移民が増えているというけれど、ここの場合は都市ごと引っ越してきたみたいな感じだ。インドネシア語をみかけることができるのはフードコートの看板ぐらい。そのフードコートの屋根や門の装飾も本場のC国そのもの。道の真ん中に置かれたアイコンの彫像も金の龍。 区画につけられた名前は、マンハッタン、ブルックリン、レジデンスアムステルダム、フロリダ、カリフォルニア、トウキョウ、オオサカ、オキナワ...海岸公園の名前はアロハ  ジャカルタの西側、スカルノハッタ空港から10分の距離この県は、伝統的な礼拝所が多い漁師町で人口過密地帯だったところ。オランダに服属されるまで300年近くイスラム教の王国があったところだが、何故突然、C国都市に変身してしまったのだろうか。 反対運動の第一人者である元国有企業省副大臣サイドディドゥ氏の話をまとめてみた。ディドゥ氏が、現地を訪れて住民の声を代弁するようになったのは昨年4月、政府がPIK2を国家戦略プロジェクトとして認定したときからだった。 PIK2とは、インドネシアの経済を牛耳ることで知られている中国人実業家9人の一人A氏のコングロマリット企業による不動産開発プロジェクトの名称。A氏と、10月で任期を終えたばかりのJ元大統領との蜜月な関係は、以前からよく知られている。民間事業として既に進められていたPIK2が、突然、国家戦略プロジェクトに認定されたのは政治的な意図が隠されていることは間違いない。 国家戦略プロジェクトとは、国家的に重要なインフラ建設事業であると政府が認めた案件に対し、政府が、特別な許可や土地収用などの優遇措置を与える制度。 スラウェシ島のニッケル鉱山精錬所開発や、バンドン高速鉄道など、(実態はどうであれ、形だけでも)計画の段階では、少なくとも時間をかけて検討され、開発均衡・雇用創出など何らかの社会的な利益があるものでなければならない。 PIK2は民間の不動産開発なので、国家戦略と銘打つには無理がある。政府が国家戦略プロジ...

国立大学図書館内で製造された偽札 ATMでも検知できず

大型高性能の大量印刷機は、深夜、フォークリフトで運び込まれた。壁には防音材を施し、外からはかすかに聞こえる程度。図書館長が自ら”本を印刷している”と説明すれば、それ以上尋ねる者はいなかった。 インドネシア第七番目の都市マッカサールにある宗教省管轄下の国立大学。近くの町で偽札を所持し逮捕された男の証言から、警察が、同大学の図書館を捜査したところ、使用されていない元トイレ2X4メートルのスペースいっぱいに置かれた高性能大量印刷機が発見された。 印刷機の他に押収されたものは、印刷に使用したとみられるインクの缶やアルミニウム粉末、デジタル計量器、紙幣を切断する機器、未切断のルピア紙幣446百万ルピア相当、韓国ウォン5,000札、ベトナムDong500 札などの海外紙幣、インドネシア銀行の定期預金証明書のコピー 45兆ルピア相当 1枚インドネシア国債 700兆ルピア相当など。 報道によれば、総額1000兆ルピア相当。これはインドネシア国家予算の三分の一にも相当する。これは、印刷済みの偽札の金額もさることながら、巨額の、預金証明や国債が印刷されているというのは、国としてヤバい。 これまでに図書館長を含む17名が逮捕されているが、偽札を市場の紙幣と交換して報酬を得ていた主婦や、図書館長に雇われて製造の手伝いをしていた一般人以外に、国営銀行の職員2名や、国家公務員4名、が含まれている。 また、この逮捕の11日後に、大学職員の一人が突然死している。関係者として自分の名前が出たことがショックで心臓発作を起こしたと報道されているが、イニシアルや年齢すらも公表されていない謎の人物だ。 現在報道されている情報は、首謀者とされる図書館長の警察に対する証言によるものがほとんど。彼は、大学の正職員であり、図書館学の講師、博士号も持ち、大学外でも活躍するアカデミックな表の顔、その裏で2010年以上も前から偽札印刷に関わっていたという。 以前は、出資者とみられる実業家の自宅で小規模な印刷機を使用して偽札を製造していたが、より大量に印刷する必要性があり、高性能オフセット印刷機GM-247IIMP-25を、6億ルピア(600万円ほど)で中国からスラバヤ港を経由して直輸入、大学の図書館に運び込んだのは2024年9月。 出資者とみられる実業家宅についても、警察は既に捜査済み、紙幣を印刷するための紙を購入した履...

賞味期限3カ月カビない格安菓子パンの需要とは

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 一年近くも車の中に放置しておいた食パンにカビ一つ生えていなかったことが少し前に日本で話題になっていたが、インドネシアには賞味期限が3カ月という超長持ち菓子パンが売られている。 2017~2018年に創業した中国資本の二企業、それぞれ東側島嶼地域向けにはOkko、ジャワ島向けにはAokaというブランド名で、インフルエンサーを利用して知名度を上げ、パンデミック騒ぎの中で急成長した企業の一つ。 窒素ガスが充填されたしっかりとした個包装に高級感を覚える人も多い。 原材料表示欄には材料名がびっしり。 ジャムの色については閲覧注意レベル? 値段はたったの2000ルピア(20円くらい)と、大手のサリロティ社の同じようなパッケージのサンドイッチパンの価格6000ルピアと比べてはるかに安い。競争の激しい都心の大手スーパーマーケットやコンビニではなく、地方の伝統的な市場に安価で賞味期限の長い菓子パンを送り込む戦略は大成功した。 インドネシアは島嶼部が多いので船で輸送するのに時間がかかるし、家の軒先に商品を並べてコンビニのような機能を果たしている小さい食料雑貨店にとっては、賞味期限が長いのは大変都合がいい。加えて漁村では船で何日も漁に出かける漁師さん用に菓子パンがまとめ買いされるという需要が常にある。 工場生産のパン最大手、サリロティ社の賞味期限は5日。同じくらいの値段なら、地元のホームメイドのパン屋さんの方が売れていた。しかし、アオカやオッコが市場に入ってきてから、価格競争力を失い、これまで地方経済の担い手だったパン屋さんはビジネスを続けることが難しくなった。 ”賞味期限3カ月というのはおかしいのではないか” 最初に声をあげたのは消費者ではなく、地方の商工会だった。SGS(国際的な製品認証機関、試験ラボサービス)に、両社の菓子パンのサンプルを持ち込み、検査したところ、アオカ235mg/Kg オッコ345 ml/Kgの デヒドロ酢酸ナトリウム(Sodium asetro ahidasetat )が含まれているという結果を得た。 インドネシアでは法律で使用が禁止されている防腐剤だが、二社ともBOPN(国家医薬品食品監督庁)の認証を受けている。 それならば、二社とも即取り消しにすればよいことだが、営業停止、商品回収となったのはオッコだけ。食品監督庁の説明によれば、アオカに...

バンカ・ブリトゥン州スズ違法採掘と芸能人の赤い糸

 高級時計やスポーツ車の店先で”すげえ安い”と大声で叫んだり、ATMの残高の数字を見せて、”まだまだこんなにある”などとわざわざ自慢してみせるのは、あまりセンスがいいとはいえない。それでも百万単位のフォロワーがいて、芸能人のポッドキャストに招待されたりしているとやはり人気者であることは間違いない。そんなインフルエンサーと呼ばれる人たちが続けて逮捕されたのは、パンデミックによる外出制限騒ぎが収まってきた頃だった。 元はバイクタクシーの運転手や、路上ミュージシャン、トレーディングを始めてからはスポーツカーを何台も所有するほどの大金持ちになったというプロフィール。しかしその実態は、誰でも簡単に稼げる方法を伝授すると称して、視聴者を違法なプラットホームに誘導し、アフェリエイターとして、スポンサーからキックバックを得ていた。高級品自慢の資金もそのスポンサーから借りたものだったとか。 #Cazy rich bodong  また、最近になって逮捕されたのが、豪邸自慢で有名なインスタグラマーHL。家具は全部イタリア製。スポーツカーと室内プールに、ブランド品や宝石のコレクション。コンテンツにするにはもってこいの贅沢な暮らしぶりで、有名人のチャンネルに招かれたり取材されたりしている。4人の子供がいるが結婚はしない。一般家庭に育ち普通のOLから女手一つで富を築いたと言う40代。 自慢そのものよりも誰もが聞きたいのは、いったいどんなビジネスでこれほどお金持ちなのかということ。そのような質問をされると”神様に祈ってる” ”わたしね一生懸命やるから”などとあまり関係ない話をしてはぐらかす。実は、彼女の富の源泉であるビジネスは、鉱山採掘後の環境回復や地元民への補償のための活動に使う資金CSR(社会的責任)の横流しだった。 #helena lim crazy rich pantai indah kapuk シンガポールとジャカルタの中間にあるバンカ・ブリトゥン島。マングローブの森と豊かな漁場、地元民の暮らしをまもるための法律に従って営業権を持つ国有企業が、無許可の業者が採掘した鉱石を買い上げ、違法な利益をCSR資金という名目で横流しする役割だったという。国営企業の赤字を補填しているのは、国家予算だから、結局、彼女の贅沢の資金源は国民の税金だったということになる。 鉱山業以外の職業...

実はがっつり中国化だったインドネシアの川上化政策

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 北京で習近平国家主席とがっちり握手、次期大統領として迎え入れられたプラボウォ国防相。国防分野で協力し、両国の協力関係を更に強化すると言っているが、国民の側にしてみればこれは全然話が違う。”私は愛国者、国を守る”と選挙の時しきりに強調していたのと全く正反対の言動だ。侵略する意図を持つ国の軍隊と協力するというのは一体どういうことなのか訳が分からない。 少なくとも国民の多くは、これまでインドネシアが中国と友好な関係にあったと思っていない。労働者を大量に送り込み、国内の雇用機会を奪う迷惑な存在だ。雇用拡大経済効果を謳った国家プロジェクトなのに、現地人を差し置いて彼らが大量にやってきて、高い給料をもらって威張っている。コミュニケーションをとろうともしないし、マナーもよくない。カモにされてるのは日本だけじゃない。 パンデミック中、バンドン高速鉄道やニッケル精錬所で働くため外国人が大量に入国していたことは、何度も大きな騒ぎになった。その度に”あれは高度な技術者、国内にはない技術の専門家だ”と説明するルフット投資海洋調整大臣といえば、中国政府の回し者として有名。パンデミック対応予防注射の指揮をとったのも、不要不急のEV車に補助金をねじ込んだのもこの人物。(勿論、大臣自身の個人的なビジネスが関係している)”政府の悪口を言う奴は国から出ていけ”という発言が物議をかもしたこともある、強面のタカ派。 庶民の味方であるジョコウィ大統領が、その正反対のルフット調整大臣をそんなにも信頼し、重要な案件を一任するのかということについて表立った批判はなかった。イメージというのは恐ろしいもので、汚職撲滅委員会の権限を弱体化させる法律も、外国企業に有利な内容が盛り込まれた雇用創出法も、一部学生や労働組合が声をあげていたが、調査によれば、ジョコウィ大統領の支持率にはあまり影響がなかった。 (日本にもかつてこういうタイプの首相がいた、そういえば、目つきや顔つき、息子の愚かさまで、似ている。小泉劇場ならぬ、ジョコウィ劇場だ) ところで、次期大統領は一体いつ確定するかについて、先に話題になっていた国会における不正選挙追及は未だ実現しておらず、憲法裁判所での訴訟の方が先に始まっている。他の大統領候補者二名はそれぞれ憲法裁判所に訴訟を起こし、アニス候補陣営は、出馬登録の時点から違反のあったジョコウィ大統領の...

米不足と価格高騰は選挙のせいである疑いが濃厚

 コンテナから直接、安い米を買うために、押し合い圧し合い道路いっぱいの人々、長時間人ごみの中で耐えきれずに気絶して運ばれる人も出ている。安いといっても5kgで5万ルピア、値上がりする前の値段。コメの価格は8月ごろから上がり始め、5~8割も上昇している。 #Warga lera anteri demi beli beras このタイミングで、3月からは、電気代の値上がりも発表された。スリムルヤニ財務大臣が、コメ価格の高騰に続いてインフレが懸念されることについて語っていたが、このことか。もうすぐ国民の大多数を占めるイスラム教徒が断食期間、米だけでなく、食用油、肉や卵香味料などの値段がもっとも上昇する時期でもあるが、一体どうなるのか。 (電気代だけなのかと思ったら、燃料費も高速料金も3月から値上げするという。前々から決まっていたのに投票日を過ぎて、直前ぎりぎりで告知するところが、腹立たしい。) ”エルニーニョ現象の影響、我が国だけでなく世界中どこでも米が不足している”今更のようなジョコウィ大統領のこのような説明は全く説得力がない。不足することが分かっていたのならなおさら、貧困者支援物資と称して、特定の候補者を選挙で勝たせるために、お米をじゃんじゃんバリバリ放出し続けてきたのか、辻褄が合わない。 #Pemerintah Import beras dari thailand 食料調達庁の倉庫によると、在庫は十分にあるそうだ。市場では品切れになっている。疑われているのは、国有企業Bulogがわざと出し惜しみして、政府が配る米のありがたみを演出しようとしているのではないか、又は政府が、国内農業保護のために制限されている米輸入の枠を広げて企業家が利益を得るため意図的に騒動を演出しているのではないかという専門家の推測もある。 米がないないと言いつつ、輸入米は既に到着しているが、市場に出回らずに政治的目的のために備蓄されているという話もある。投票日はもう過ぎている。二回目の投票があるかもしれないことを予測しているのか、それとも別の目的があるのか、政府と政党はこぞって米をため込んでいる。 今回の選挙のために放出された、貧困者支援予算がいかにえげつないものだったかということは投票日3日前に公開された暴露動画Dirty voteの中でも数字が言及されている。2023年は476兆ルピア...