2024-08-10

賞味期限3カ月カビない格安菓子パンの需要とは

 一年近くも車の中に放置しておいた食パンにカビ一つ生えていなかったことが少し前に日本で話題になっていたが、インドネシアには賞味期限が3カ月という超長持ち菓子パンが売られている。

2017~2018年に創業した中国資本の二企業、それぞれ東側島嶼地域向けにはOkko、ジャワ島向けにはAokaというブランド名で、インフルエンサーを利用して知名度を上げ、パンデミック騒ぎの中で急成長した企業の一つ。

窒素ガスが充填されたしっかりとした個包装に高級感を覚える人も多い。

原材料表示欄には材料名がびっしり。
ジャムの色については閲覧注意レベル?

値段はたったの2000ルピア(20円くらい)と、大手のサリロティ社の同じようなパッケージのサンドイッチパンの価格6000ルピアと比べてはるかに安い。競争の激しい都心の大手スーパーマーケットやコンビニではなく、地方の伝統的な市場に安価で賞味期限の長い菓子パンを送り込む戦略は大成功した。


インドネシアは島嶼部が多いので船で輸送するのに時間がかかるし、家の軒先に商品を並べてコンビニのような機能を果たしている小さい食料雑貨店にとっては、賞味期限が長いのは大変都合がいい。加えて漁村では船で何日も漁に出かける漁師さん用に菓子パンがまとめ買いされるという需要が常にある。

工場生産のパン最大手、サリロティ社の賞味期限は5日。同じくらいの値段なら、地元のホームメイドのパン屋さんの方が売れていた。しかし、アオカやオッコが市場に入ってきてから、価格競争力を失い、これまで地方経済の担い手だったパン屋さんはビジネスを続けることが難しくなった。

”賞味期限3カ月というのはおかしいのではないか” 最初に声をあげたのは消費者ではなく、地方の商工会だった。SGS(国際的な製品認証機関、試験ラボサービス)に、両社の菓子パンのサンプルを持ち込み、検査したところ、アオカ235mg/Kg オッコ345 ml/Kgの デヒドロ酢酸ナトリウム(Sodium asetro ahidasetat )が含まれているという結果を得た。

インドネシアでは法律で使用が禁止されている防腐剤だが、二社ともBOPN(国家医薬品食品監督庁)の認証を受けている。

それならば、二社とも即取り消しにすればよいことだが、営業停止、商品回収となったのはオッコだけ。食品監督庁の説明によれば、アオカには危険な保存剤が含まれていることは証明されなかったという。

報道では”化粧品に使用する防腐剤が菓子パンに使用されている”と伝えられている。
デヒドロ酢酸ナトリウムは、過剰に摂取すると痒みなどの症状、心臓、肝臓に障害を与える可能性があるという。

日本では、デヒドロ酢酸ナトリウムは、チーズ、バター、マーガリンのみに 0.50g/kg以下(デヒドロ酢酸として)の使用が認められていると書かれている。


日本で許可されてる500mlより全然少ないと説明している専門家もいるが、チーズやバターに使用するのと、パンに使用するのはやはり、大量に摂取してしまうリスクが全然違うのではないか。似たような商品、同じ賞味期限なのにブランドAは営業停止だが、ブランドBは問題なし、ということで今でも店頭に並んでいる。

この件が話題になって、消費者の反応は、賛否両論で、

”食べたら喉がかゆくなったけどやっぱりな”

”クスリっぽい味がする”

”オーブントースターで焼いたらプラスティックが溶けるようなにおいがした”など

もう買わない派と
”保存剤のせいじゃない。袋にガスが入っているから長持ちするのよ”

”焼けば防腐剤の毒が抜けて安心して食べられる”

などと、あくまで庇おうとする人の二つに分かれる。

アオカの製造者側の説明はというと、


”私たちの工場では、病院の手術室のような無菌状態の国際水準の室内で生産しているので、長持ちするんです”

その説明って‥山崎パンの時の説明と同じじゃないか!と思って振り返ってみた。