ユネスコ指定公園でニッケル採掘という超愚策‐ EV車ビジネスの自然破壊力
Oleh I Made Adi Dharmawam - Karya sendiri, CC BY-SA 4.0, Pranala
世界中の珊瑚の宝庫、絶滅危惧種の生息や貴重な海洋生物が生息する秘境、世界的なダイビングスポットとして名高いラジャアンパット諸島。
インドネシア西パプア州の北西端にあたるこの、真っ青な海に点々と並ぶ小さな島々からなる自然公園は、ユネスコ世界ジオパークにも指定されている。
そんな貴重な世界の財産、最後の楽園で、なんと・・・・ニッケル鉱山採掘が操業していたということが発覚した。
環境保護団体提供の空からの映像によると、森林が伐採された赤土の上をショベルカーが何台も忙しく動き回っている。小さな島だけにその真っ青な海がすぐ近くに見えるような場所だ。
そして鉱物を運び出すための運搬船は、目立たないように自然公園側から見えない位地に停泊しているが、沿岸部はすでに茶色く濁っている。
ラジャアンパットの意味は、4つの王という意味で、無数にある小さな島の中で、最も大きいこの4つの島が地名の由来になっているが、その4つの島を含む複数の島が、現在、ニッケルの採掘場になっているという。
ラジャアンパットを救え! 資源開発省のイベント会場で、副大臣が演説している最中に、プラカードを持った環境保護団体がなだれ込んだことがニュースで報道され、大炎上のきっかけとなった。そして資源開発大臣自らが、驚いた(ふりをして)現地視察にまで出かけなくてはならなくなった。
視察から戻った資源開発大臣は早速、4社の事業権を即、停止したと発表した。その中には案の定、汚水を海に垂れ流しにしていた企業もあった。但し、国有企業Aの子会社一社だけが、何故か事業許可剥奪を免れ、Gagという島で採掘を続行することを許された。
その理由は、ジオパークの中じゃない、安全基準を守っている、というもの。しかし、非常に疑わしい。環境保護団体グリーンピースインドネシアは “ラジャアンパットのニッケル採掘は、全面的に禁止されなければならない” と強く訴える。
森林が伐採されたあと、むき出しになった赤土は雨が降れば土砂となって大量に川や海に流れ込む。さらに、鉱物を運び出すための運搬船が沿岸部に頻繁に近づくだけで、珊瑚礁や沿岸部のマングローブが確実に破壊される。
だからこそ、小さな島や沿岸部での鉱山開発を禁止する法律がすでにある。例え、汚水を垂れ流しにしないルールを守ったとしても、小さな島での鉱山開発は禁止されている。
しかし問題なのは、法律を守らせるためにあるはずの資源開発省自らが、違法な採掘、事業許可を発行していることだ。
資源開発大臣が、採掘続行を許可したGagという島ではすでにおよそ島の3割がはげ山になっている。そして、その採掘許可証には、島の面積の倍もの面積が採掘対象として記載されているという。ということは一つの島をまるごと採掘してよいということなのか、あるいは海の中まで採掘してよいということなのだろうか?
これだけでもどんなに雑な許可管理になっているかがよくわかる。環境を破壊しない鉱山開発などこれまでにあったことがない。採掘企業の株主構成も注目されている。要人の家族や癒着で有名な疑惑の企業家、そして軍の幹部や、資源開発省関係者の名前もある。そして何故か、疑惑の鉱物運搬船には前大統領の名前とその婦人の名前がつけられている...
もうこんな情報は飽き飽きだ。こんなことで、あんな美しい珊瑚礁の海が、魚も住まない茶色い海に変えられてしまっていいものだろうか...
資源開発大臣や、推進派の政治家たちが、"海はまだ青い、まだまだ大丈夫”と言えばいうほど、危機感が迫る。
ラジャアンパット観光は、勿論お金持ちか外国人のためのバリ島よりもっと格が上のリゾート、庶民がいけるようなところではない。
だからといって、環境破壊を心配しているのは地元の人たちだけではない。国民的関心事になっているのにも、根拠がある。
10年ほど前から政府が推進する川下化政策。2020年のEVバッテリー需要絶頂期に、ニッケル鉱石の精錬所が次々と建てられた。
スラウェシ、マルク、ハルマヘラ、ここは大昔から、豊かな自然、スパイス諸島、モルッカ諸島として、世界にその名を知られた海域だ。その島々はニッケル採掘のせいで、わずかここ数年間で楽園から地獄へと大転落した。
沿岸部には茶色く濁った海が広がり、漁業も農業も壊滅した。地下水が茶色く濁り、重金属が含まれ、日常のための水さえ購入しなければならなくなった。土埃で肺をやられる子供も少なくない。人々は、水を買うため、医者にみせるため、食糧を買うために、事故の多い危険なニッケル採掘場で労働する以外に収入源がない。
何千もの労働者が出社する朝、道はオートバイで大渋滞、雨が降れば道には赤い水たまり。それでも遅刻すれば給引きの罰金が待っている。労働者は会社に通勤バスを求めてデモをしていたがどうなったのだろうか。
大自然に抱かれ暮らしてきた何万年もの人間の歴史は、つい最近終わりを迎えた。そうあの、パンデミック騒ぎの陰で、短期間の間に一気に開発が進んだ。
現在精錬所はいくつあるのか、54箇所が操業中、その他120箇所が建設中? インドネシアの過剰生産のせいで価格が下落し、供給過剰、需要も減退しているんじゃなかったのか。
経済評論家の先生がこのままでいくと10年ももたないと言っていた。その先生はヒリリサシ政策を早くから批判していたが、何故か昨年末に心臓発作で急死してしまった。95%が外国の利益になっているに過ぎないということも、この政策に隠されたからくりのことも、あの先生の言っていたことは本当だった。
ニッケル鉱山開発は、貧しい人を益々貧しくさせ、富む人を益々富ませる。雇用機会創造も嘘だし、生活向上も嘘だ、さらに国の歳入になるということすら大嘘だ。
ニッケル採掘が誰かの個人的なまたは外国企業の利益になるということはもう常識。あっというまに破壊され汚染されるということは、わかりきっている。
そのすでに開発され汚染されてしまった島々の東側に位置するのがラジャアンパットというわけ。
環境保護のためのEV車ビジネスのすさまじい破壊力。
環境保護という名前がつくものは愚策ばかりだ。
美しい自然など何の価値も感じない人というのは、つくづく本当に存在すると思う。
EVだけでなく、バイオ燃料推進策という環境保護策のおかげで、
開発権の拡大がとまらない。
愚かな国の愚かな政治家たちは
自然保護林だろうが、国立公園だろうが、おかまいなし。
地球の肺と言われる東南アジア熱帯雨林の森林はむしろ、この環境対策のおかげで
確実に、急速にむしばまれ続けているということを知っておいてほしい。
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