2024-12-07

東南アジア発 オンラインカジノの猛威

ほんの数分間で、100円が5万円に。この快感を一度覚えると、お金を手にする度に、同じことを考えてしまうようになる。それまでの掛け金なしのオンラインゲームでは物足りなくなり、給料が入れば全額を課金してしまう。

最近は、身分証明書をアップロードするだけで借りられるオンライン金融というのが普及していて、オンライン賭博のアプリが入った同じスマホを使って、容易く一線を越えてしまうことが出来るようになっている。引き出せるだけ引き出す一方で、友人知人への借金、身の回りの品々を売り払う。

”深夜、1~2時頃、金貸してくれとラインしてくる友人がいたら、そいつは間違いなく、オンライン賭博にはまっていると思っていい” 友達、信頼を失うだけでなく、全財産をつぎこみ、経済困難と借金取りがやってくる。ついに一家離散、ここまでになっても依存症から中々抜け出すことができない。

多幸感や快感をもたらす神経伝達物質ドーパミンが急増を繰り返すと、意思決定と自制心をつかさどる前頭前皮質領域に、物理的な損傷が生じるため、依存症から抜け出すことは物理的に困難になる。また身の程に相応した金額上限というストッパーも外れてしまうことも特徴の一つ。

取返しのつかない状況に落ち入れば落ち入るほど、そしてそれを自覚すればするほど ”勝ちさえすれば、全てを一度に清算できる”といった思い込みに傾倒し、つぎ込む金額も増していく。

依存症の治療のために精神科を受診する患者のほとんどが、”絶対に勝てる方法は分かっている”と思い込んでいるが、実は、オペレーターの設定するアルゴリズム一つで決まるのだ。

オンライン賭博運営者にとって、利用者の精神状態をモニタリングすることは、オンラインカジノ運営の重要なノウハウの一つである。

利用者がスマホを変えた(お金がないから売った)又はオンライン金融から借金した金額情報を、オペレーターは全てリアルタイムで把握しており、最初は適当に勝たせるが、借金してまでつぎ込んでくるようになったら、勝ちを与える必要はなし”という運用になっている。

人間の欲望と心理を徹底的に研究しつくしたオンラインカジノ運営のノウハウは、特別な専門知識がなくても誰でも資金さえ出せば参入できるよう、既にフランチャイズ化されており、その世界的な拠点は、中国南部、又はカンボジアにあるという。

そして最も騙されやすいのがインドネシア人。東南アジアのオンラインカジノ利用者ランキングによると、インドネシアが二十万人でダントツの一位、二位のカンボジアは二万人台と一桁違う。

#judi online asia tenggara

金融取引報告分析センターという国家調査機関によると、インドネシアのオンライン賭博取引額は、2022年81兆ルピアから、2023年には327超ルピアと、4倍にも激増した。そして2024年第2四半期で既に300兆ルピア、そして現在第4四半期には900兆ルピアにも達している。

#transaksi judi online tembus Rp.900 triliun

利用者が激増した背景には、初回の課金金額が、五十万ルピアから、子供のお小遣い程度の1万ルピアに大幅に引き下げられたことがある。調査によれば、利用者は二百三十七万人、被害者は880万人そのうち80%が低所得者層、未成年が13%、そのうち2%が10歳以下の子供だという。

有名人やインフルエンサーによるオンラインカジノサイトへの誘導動画をみてみると”公認のアプリ” ”すごい簡単、プロモが沢山”などと全く同じ台本になっている。まさかあの人がと思うような大御所のアーティストまでそのような動画に出ていた。一般人の場合は、大勝する実況中継、贅沢品の自慢、こういう定型もパッケージの一つ。

しかしながら、900兆ルピアといえば国家予算の三分の一にも相当する恐るべき金額である。国内で使用すれば、収益となり、雇用機会を生むはずの資金が、海外へ流出し消えているのだから景気が良好なはずがない。収入が減ったこと、社会への不満、どうやって補うかを考えるストレス。オンラインカジノに手を出だすきっかけについて大抵の人が言うこともまた定型がある。

実際インドネシアでは、進学もせず、就職先も見つからない、Z世代の失業者が世代人口の2割以上にあたるということが問題になっている。日本に実習生として働きに行く若者も急増しているが、国内にはその何倍もの、働きたくても雇用先のない人が急増している。

高額の報酬を得られるという話につられて観光ビザで出国し、タイで働くはずが、バスでミャンマーに連れて行かれ、帰国できなくなったインドネシア人が、外務大臣に助けを求めた動画が一時期話題になったことがあった。

彼らの仕事は、アジア各国から、自分の国の国民をターゲットにした振込み詐欺のかけ子。長時間労働、目標を達成できなければ電気ショックガンの罰、〇器売買組織に売り飛ばされると脅される。

#WNI di myammar minta tolong

”タイやカンボジアに出稼ぎをあっせんされても行かないように” 外務大臣が注意を呼び掛けていたこともあった。最近は、オンラインカジノで働くオペレーターも、同じような状態にあるらしいことがわかってきた。

オンライン賭博運営が違法でないと言われているカンボジア(法律上は禁止されているらしい)には、インドネシア人をターゲットとした、インドネシア人が出資し運営するオンラインカジノの拠点が無数にあり、現在、10万人ものインドネシア人が違法に就労しているということが、出入国の記録からわかっている。

政府の対策はというと、大統領の命令でオンラインカジノ撲滅委員会を組織し、通信大臣によれば、3百万もの賭博サイトをブロックして対策をとった”という。しかし、第2四半期で、すでに昨年の総額300兆ルピアを超えていたオンラインカジノ取引総額は、その後も激増し11月には900兆ルピアにも達しているということは、全く効果がなかったことがはっきりしている。

依存症の夫にガソリンをかけて火をつけた(警察官の夫婦だった)事件、顧客の口座から現金を引き出していた銀行員、オンライン詐欺で逮捕された主婦、自らの命を絶つ軍人など、オンラインカジノに関係する凄惨な事件は後を絶たない。

#istri bakar suami

どさくさまぎれに、オンラインカジノ被害者に、政府が貧困者支援金を提供してはどうかと言う案が出たが、これは対策ではなく、促進策だ。日本でも一時期あったホスト被害者に政府が支援金を提供する案がでたことがあったのを思い出し、同じ発想だなと思った。

金融取引報告分析センターはまた”千人の国会議員、地方議会議員が、オンラインカジノの利用者である” と発表している。(同センターの権限は報告するだけで、調査の権限はない。名簿と明細を、執行機関である汚職撲滅委員会や警察、検察庁に委ねるのみである)

#PPATK ungkap 1000 anggota dewan main judi online

オンラインカジノの利用者が、政治的権限のある人物だと一般人と何処が違うのだろうか?議員が、依存症になったり、破綻したという話は聞いたことがないが、もしかすると、別の運用ルールが隠されているのかもしれない。

不正に得た利益を隠蔽するための格好の投資先になっていることは公然の秘密で、これらは、不正選挙の資金源にもなっている。不景気からくるストレスで、オンラインカジノに手を出す一般人、不正に儲けたお金で、無能な政治家が権力を独占、さらに国民を苦しめる政策を推進し、格差が拡大されるという悪魔のスパイラル。

実は、10月後半に新政権が発足し、大臣が交代してまもないタイミングで、通信省の職員11人が逮捕されるという一大スキャンダルが発覚した。逮捕されたオンラインカジノの運営者が所持していたスマホの履歴から、違法なサイトを閉鎖する権限を持つチームの職員が、カジノ運営者と頻繁に連絡を取り合い、報酬を受け取っていたことが発覚したのだ。

閉鎖しなければならない5000件のサイトのうち、1000件のサイトだけを残し、さらに通信省外部のサテライトオフィスから、閉鎖されないよう監視していたという。当時の通信大臣の任期は1年にも満たなかったが、逮捕されたチームを採用したのはこの大臣だ。中には公務員テストに不合格だったにもかかわらず採用されたメンバーもいる。

#Kasus komdigi judi online

インドネシアの通信省にはその他にも怪しげなところがあって、やはり数カ月前ぐらいに、一括管理していた国と地方政府のデータサーバーがハッカーに盗まれ、機能不全になったことがあった。バックアップをとっていなかったとか、政権交代の前に不都合なデーターを消すための自作自演であるとか、盗まれたデータは既に落札されているなどという噂がある。

#pusat data nasional diserang

この手の複雑で闇の深い事件は一筋縄で解決できる問題ではない。

それでも、通信省の嘘を暴くIT専門家の動画チャンネルと、元オンラインカジノオペレーターから回心した説教師の知名度が急上昇したこと、

高級腕時計をはめ、高級車を買いあさり、毎月のように海外旅行に出かけたり(それまでは借家に住みオートバイで通勤していたという)通信省若手11人の急上昇な暮らしぶりが(職場でも浮いた存在だったという)ほんの束の間だったことなど、

一般人にとって学ぶところは沢山あったと思う。

【高齢夫婦刺傷】被害夫婦の妻への殺人未遂容疑でインドネシア国籍の男逮捕…近隣住民は安ど(静岡・掛川市)

11月末に、静岡県掛川市で24歳のインドネシア人男性が、高齢夫婦宅に侵入、刃物で切りつけたというニュースがあった。こちらでは、”オンラインカジノで遊ぶ金が欲しくてやったと自白した” と、はっきり書かれているけれど、日本語のニュースでは動機は不明だと書かれているのは何故なのか。ちょっと気になる。