祭りか?迷惑か?東ジャワ発『ホレグ』爆音サウンドパレード

壁が揺れ、家の瓦が落ち、ガラスが割れる。赤ちゃんは大泣き、怒りっぽい人が増え、老人は具合が悪くなる。これはもう音楽ではなく災害。

東ジャワというところは、バリ島と海峡を隔てた、ジャワ島の東側。工業を中心とした小都市や農村が点在する、ぐっと生活感のあるところ。ここが、今話題になっている大音量スピーカーシステム、通称ホレグの本拠地になっている。

こちらで国民的な音楽といえば、ダンドゥット。アラブとインドの映画音楽を足したような強いバス音に、笛、押しの強い女性歌手の、セクシーで意味深な歌詞とダンスというのが特徴で、村の親睦会や結婚式などには、こういうステージを設けるのが定番。

でもこの地方では、馬鹿でかいスピーカーシステムとオペレーターのDJが流す、爆音リミックスというトレンドがある。ホレグというのは振動という意味で、まさに音が大きければ、大きいほど、スピーカーシステムも見た目も大きければ大きいほど、価値が上がる。

大型トラックを改造して積めるだけ積み上げたスピーカー。レーザーライトとか音に合わせて点滅するLEDのデコレーションも装着して、まるで大きなコンサートのステージがそのままやってきたみたいで、ソーシャルメディア映えもする。

大音量を鳴らしながらゆっくりと通過し、その後を、有志のダンスグループや一般市民の見物人がついていく。こういうのをローカルカーニバルという。

レンタル料金は1台30ジュタ(30万円)くらいからだそうで、独立記念日や大祭明けなど、村や地域で何かイベントをやろうという場合には予算の範囲だし、ご近所住民や仲間うちで、寄付を募って企画することも可能な範囲。

そんなトラックを十台以上も並べたイベント、ローカルフェスというのもあって、入場料が1万ルピア程度(100円程度)と安いこともあって、周囲の町や村から人が集まり、ひしめき合うほどの盛況ぶりになる。駐車場料やら、屋台での収入やらで、不景気な地方経済を活性化させる効果があるらしい。

こういうイベントが、パンデミックによる制限が解除された後あたりから現在に至るまで、頻繁に行われるようになり、地元ではその騒音が深刻な問題になっている。

国内の専門家は120デシベルならまだ大丈夫と言っているが、WHOによると安全音量の目安は80デシベル。そして、問題になっているホレグサウンドスピーカーシステムの音量は130デシベル。これは、ジェット機が飛ぶときの騒音に相当するそうだ。

手で耳をふさいでも耳が痛いレベル。瓦が落ちたり、窓ガラスが割れたというのも実際にあった話。タチが悪いのは、苦情を言ったり音量を下げてくれるよう頼みに行った住民が、お年寄りであれ何であれ、容赦なくその場で集団リンチを受ける暴力沙汰が発生したりすることだ。

主催者は、瓦が落ちるのはサウンドシステムの性能がいい証拠だと、薄笑い。住民の安全よりも、経済効果が優先されるためなのか、地方政府も警察も、本気で取り締まるつもりがない。いや逆に、通報すると逆に逮捕される可能性もあるので警察を通さず解決しなければならない。

爆音以外にも迷惑要素が盛りだくさん。高さ5メートルにもなる車体は、明らかに容量オーバーだし、走行中はさらにその上にわんさと人が載っている。トラックが通り抜けられないような狭い道では、その男性たちが降りてきて、塀を壊したり、橋の欄干を壊したり、街灯を傾けたり、勝手に家の軒先をのこぎりで切り落す。

高く積み上げた巨大なスピーカーは、ただ紐で縛り付けただけのものということがあるようで、道路を走行中に崩れ落ちたり、パレード中、踊っていた子供たちの上に落下したりということが実際に起こっていて、衝撃の映像がたくさん拡散されている。

”なんという傲慢” 地元民の怒りのソーシャルメディア上の活動のおかげで、十年も前から始まったというこの東ジャワ地方の問題は全国的な関心を集めるようになり、先月、東ジャワのイスラム教権威団体がこのホレグにハラーム認証を下したということが大ニュースになった。

ハラームというと、通常は豚肉の材料を使用しているかどうかに関して下されるもの。しかし食べ物だけではなくて、例えば飲酒や賭博、嘘をついたり不倫や盗み、というのをハラームな行為というそう。

ホレグも健康、環境、社会に悪影響を与えるという理由でハラームの条件にまさに当てはまる。スピーカー車そのものの使用がハラームなのではなく、大音量はだめ、道路交通法を守らないのはだめ、肌に密着した服装でセクシーな動きをするダンスパフォーマンスや飲酒つきのパレードもだめ、という全くあたりまえの話。

(アルコール類を提供する店を襲撃したり、海外のアーティストの公演を宗教的でないといって中止にさせることで有名な過敏な宗教団体が、とくに地方には多く存在しているはずだが、このパレードについては何も抗議していない)

地方に行くほどイスラム教権威の威力は強いはず、さあこれで一件落着かと思いきや、そうでもなかった。ホレグ愛好家たち、ほとんどがムスリムであるはずなのに、意外にもリベラルな考え方をしている。

”こういうのは趣味の問題だから宗教が口出しすることではない” 
”ホレグがなくなったらつまんない”
”地域の文化だ”


認証後に行われたローカルパレードでは、なんと、スピーカートラックにハラールマークをつけたり、ダンサーにハラールの衣装を着せたりするなど、ハラーム認証を受けたことに対する抗議の意を示す。

ある村の村長が、”ホレグがあるので、お年寄りや子供は避難してください”なんていうお知らせを出したのも衝撃だった。さらに衝撃だったのは、パレードを観に来ていた30代の女性が心臓発作で急死したことだった。

政府も警察も宗教の権威でさえも制御できないホレグは
いったいどこまで広がっていくのか恐ろしくもある。

因みに、礼拝所スピーカーの大音量も、実は音量の制限とかスピーカーを外に向けない規定があるけれど、ほとんどの礼拝所で守られていない。2017年北スマトラ州で、具合が悪いので音を小さくしてもらえませんか、と言った女性が仏教徒だったということで、群衆の怒りをかい、仏教寺院が焼かれて、その女性は宗教侮辱罪で訴えられて実刑判決を受けたケースがある。

同じ地域、宗教の人たちの間でさえ、こういう奴らがいるおかげでこの国はいつまでも後進国のままなんだと嘆いている。本当にその通りだなと思う。

大音量のスピーカーをトラックに積んで練り歩くパレードの騒音が深刻な問題になっているのは、他にも、インドやブラジルがあるという。

インドはヒンドゥー、ブラジルはキリスト教ということは人種や宗教のせいではなく、そういう人はどこにもいるということだ。

日本にも暴走族というのがあって、大きい音を出すことや、オートバイを改造すること、警察に捕まらなかったことを自慢する種類の人がいる。

関わらないに超したことはない。となるとやっぱり黙っているしかないのか。
宗教の権威の言うことにも耳を貸さないというなら仕方ない。
神様の裁きが下るにちがいない。
結局そこに行きつく。

DJもオペレーターも難聴になったら、即クビになるんだろう。
難聴になったら、補聴器つけてでもやっぱりホレグを聞くんだろうか?
難聴になったら、仕事を探すのはさらに大変そうだ。
何の補償制度もないのに。
身体が壊れるとわかっていてもやめられないという点では、
アル中みたいなものだろうか。

とある県では、耳鼻科を受診する人が25%増加したという
”そしたら補聴器が売れて、今度は耳鼻科が儲かって経済効果が上がるんだよ”

まさかもう投資してる人がいる?
地獄過ぎる。

#Sound horeg jatuh

#sound horeg karnaval

#sound horeg Lumajang



このブログの人気の投稿

ゴルゴ13に描かれたスシ海洋漁業大臣 ‐任期中に襲った悲劇とその後

大橋を渡ったらそこはC国だった 血も凍る土地収奪キャンペーン

元大統領の学歴詐欺疑惑 - 卒業証書偽造の真相は?