投稿

ラベル(インドネシア経済)が付いた投稿を表示しています

国立大学図書館内で製造された偽札 ATMでも検知できず

大型高性能の大量印刷機は、深夜、フォークリフトで運び込まれた。壁には防音材を施し、外からはかすかに聞こえる程度。図書館長が自ら”本を印刷している”と説明すれば、それ以上尋ねる者はいなかった。 インドネシア第七番目の都市マッカサールにある宗教省管轄下の国立大学。近くの町で偽札を所持し逮捕された男の証言から、警察が、同大学の図書館を捜査したところ、使用されていない元トイレ2X4メートルのスペースいっぱいに置かれた高性能大量印刷機が発見された。 印刷機の他に押収されたものは、印刷に使用したとみられるインクの缶やアルミニウム粉末、デジタル計量器、紙幣を切断する機器、未切断のルピア紙幣446百万ルピア相当、韓国ウォン5,000札、ベトナムDong500 札などの海外紙幣、インドネシア銀行の定期預金証明書のコピー 45兆ルピア相当 1枚インドネシア国債 700兆ルピア相当など。 報道によれば、総額1000兆ルピア相当。これはインドネシア国家予算の三分の一にも相当する。これは、印刷済みの偽札の金額もさることながら、巨額の、預金証明や国債が印刷されているというのは、国としてヤバい。 これまでに図書館長を含む17名が逮捕されているが、偽札を市場の紙幣と交換して報酬を得ていた主婦や、図書館長に雇われて製造の手伝いをしていた一般人以外に、国営銀行の職員2名や、国家公務員4名、が含まれている。 また、この逮捕の11日後に、大学職員の一人が突然死している。関係者として自分の名前が出たことがショックで心臓発作を起こしたと報道されているが、イニシアルや年齢すらも公表されていない謎の人物だ。 現在報道されている情報は、首謀者とされる図書館長の警察に対する証言によるものがほとんど。彼は、大学の正職員であり、図書館学の講師、博士号も持ち、大学外でも活躍するアカデミックな表の顔、その裏で2010年以上も前から偽札印刷に関わっていたという。 以前は、出資者とみられる実業家の自宅で小規模な印刷機を使用して偽札を製造していたが、より大量に印刷する必要性があり、高性能オフセット印刷機GM-247IIMP-25を、6億ルピア(600万円ほど)で中国からスラバヤ港を経由して直輸入、大学の図書館に運び込んだのは2024年9月。 出資者とみられる実業家宅についても、警察は既に捜査済み、紙幣を印刷するための紙を購入した履...

東南アジア発 オンラインカジノの猛威

ほんの数分間で、100円が5万円に。この快感を一度覚えると、お金を手にする度に、同じことを考えてしまうようになる。それまでの掛け金なしのオンラインゲームでは物足りなくなり、給料が入れば全額を課金してしまう。 最近は、身分証明書をアップロードするだけで借りられるオンライン金融というのが普及していて、オンライン賭博のアプリが入った同じスマホを使って、容易く一線を越えてしまうことが出来るようになっている。引き出せるだけ引き出す一方で、友人知人への借金、身の回りの品々を売り払う。 ”深夜、1~2時頃、金貸してくれとラインしてくる友人がいたら、そいつは間違いなく、オンライン賭博にはまっていると思っていい” 友達、信頼を失うだけでなく、全財産をつぎこみ、経済困難と借金取りがやってくる。ついに一家離散、ここまでになっても依存症から中々抜け出すことができない。 多幸感や快感をもたらす神経伝達物質ドーパミンが急増を繰り返すと、意思決定と自制心をつかさどる前頭前皮質領域に、物理的な損傷が生じるため、依存症から抜け出すことは物理的に困難になる。また身の程に相応した金額上限というストッパーも外れてしまうことも特徴の一つ。 取返しのつかない状況に落ち入れば落ち入るほど、そしてそれを自覚すればするほど ”勝ちさえすれば、全てを一度に清算できる”といった思い込みに傾倒し、つぎ込む金額も増していく。 依存症の治療のために精神科を受診する患者のほとんどが、”絶対に勝てる方法は分かっている”と思い込んでいるが、実は、オペレーターの設定するアルゴリズム一つで決まるのだ。 オンライン賭博運営者にとって、利用者の精神状態をモニタリングすることは、オンラインカジノ運営の重要なノウハウの一つである。 利用者がスマホを変えた(お金がないから売った)又はオンライン金融から借金した金額情報を、オペレーターは全てリアルタイムで把握しており、最初は適当に勝たせるが、借金してまでつぎ込んでくるようになったら、勝ちを与える必要はなし”という運用になっている。 人間の欲望と心理を徹底的に研究しつくしたオンラインカジノ運営のノウハウは、特別な専門知識がなくても誰でも資金さえ出せば参入できるよう、既にフランチャイズ化されており、その世界的な拠点は、中国南部、又はカンボジアにあるという。 そして最も騙されやすいのがインドネシア人。東...

息子の贅沢自慢でバレた国税局幹部汚職の実態

 ”死人なんか怖くねえぞ”  うずくまって既に動けなくなっている17歳の高校生に一方的な暴行を加えながら言った言葉の意味は、親父がなんとかしてくれるから警察なんかこわくないという意味だったのだろうか。 先月、南ジャカルタの住宅街、人けのない路上で発生した暴行傷害事件。被害者少年を呼び出して暴行を加える一部始終を友人に録画させていたという加害者青年20歳の異常さとあさはかさ、そして逮捕されても全く反省の色が見えない傲慢な態度は、彼の父親が国税職員という情報ともに大炎上。 そして加害者青年が、度々ソーシャルメディア上で披露していた、高級ジープやハーレーダビットソンを乗り回す映像から、ネット民が推定した金額と、彼の父親が属する公務員レベルの月収の比較分析から、その不釣り合い具合に注目が集まる。 潔癖で収税目標を守ることに厳格ということで知られるスリムルヤニ財務大臣は、これに応答し、納税者の信頼を取り戻すべく徹底的な調査を約束。日を開けず、公開された情報によると、納税者には厳しく追及されるような違反の数々をR自ら長期に渡って行っていたということがわかった。 分かりやすいところではまず、Rが所有していた、南ジャカルタ、ジョグジャカルタ、マナド、にあるプールやジム完備の広大な大邸宅。納税額が年間たったの36万ルピア(三千円程度)というのはいくらなんでもやりきれない。そして息子が乗り回していた高級車両も、辿ってみれば支援金を受給している生活困窮者の住所が利用されていた。 他にも、公務員として登録された金額をはるかに上回る隠し資産も発覚し、関連する40口座が凍結され、慌てて移した銀行の金庫の現金も没収された。Rは懲戒免職処分となり、現在、汚職撲滅委員会によって調査が続いている。 大臣はまた、さらに贅沢な暮らしぶりをソーシャルメディアで披露している職員について市民からの通報を奨励。職員限定の大型バイク愛好会のコミュニティーは、汚職のためのロビー活動とみなされかねないとして、大臣によって解散させられた。 通常、税関係の汚職はあってもこれほどの国民的大ニュースになることはあまりない。10年前に租税総局職員Gayus Tambunanの汚職事件があったが、それに比べると報道される金額も桁違いに多い、さらにR単独の犯行としてだけではなく、財務省内部の大規模な汚職ネットワークの存在につ...