インドネシア地方首長選挙の真相 ジャカルタでは勝てなかった元大統領の支持する候補者
11月27日に行われたインドネシア全国統一地方首長選挙について、日本語メディアでは ”大統領と元大統領の支持する候補者が勝利”という点に焦点をあてた形で報道されているが、これは、2024年の大統領選挙戦からの流れを抜きにしては理解することができない。 まず、スハルト独裁政権崩壊後、民主化時代の歴代大統領が、自らの後継者を決める大統領選挙や、地方首長選挙に介入し、自身の側近や身内をゴリ押しするというようなことはこれまでになかった。 後の政権の負担にならないよう、重要な決定や人事も、退任間近になれば控えるのが最高権力者としての威厳というもの。少なくとも6代目ユドヨノ大統領は中立の立場を通した。しかし、7代目大統領のジョコ氏は違う。 自身の後継者を決める大統領選挙の選挙運動機関、2023年の後半ごろから始まったジョコ氏の権力の乱用とは、国家予算の私物化、地方首長や警察を動員、ばら撒き・恐喝、データの操作・・・ そのような暴走を許さないという理想に基づいて設置されているのが憲法裁判所だが、現職大統領の違法行為に対しては無力であるということが明らかになった。不正選挙は判決によって証明されず、現役大統領の推薦するプラボゥオ氏とジョコ氏の長男が政権を握ることになった。 2024年大統領選挙の結果と茶番だった憲法裁判 残りの大統領任期中を通し、ジョコ氏は選挙関係のある政府機関の報酬アップや表彰、人事の入替えを次々と行った。さらに、自然破壊・国土縮小につながる砂の輸出許可や、実業家の利益にしかならない大規模土地開発を国家プロジェクトに認定すると、国家機関による強制的な土地の取り上げと、地元民との間の紛争が、これまでもあったが更に激しくなった。 その目的は、選挙に協力した側に約束された報酬、又は恩を売る行為であることは明らかで、この報道と同時進行で、ヌサンタラ首都移転計画の杜撰さ、違法鉱山開発の実態、経済効果のない対外債務を無責任に膨らませたこと、大臣や税関職員の汚職の実態も次々と暴露された。 国民はもう以前のように”ジョコウィ大統領”と呼ばなくなった。ジョコ氏が幼い頃、病弱であったために改名したというエピソードを引用し、改名する前の#Mulyonoという名前で呼び捨てにするのがネット民の隠語になっている。 ジョコ氏は、10月で大統領の任期を終えた後、その後もプラボウォ氏を通して権力を...