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インドネシア無料給食プログラム 大量廃棄・集団食中毒連発の現実  

石破首相が支援を約束したことで、日本国民から大変な反感を買っているインドネシアの無料学校給食プログラム。日本では表面的なことしか報道されていないと思うので、現地ではこのプログラムについてどのように報道されているのかについて書く。 無料学校給食プログラムは、現地では (MBG・無料栄養食プログラム)と呼ばれ、無料なだけでなく、貧困地域の学童や妊婦に栄養価の高い食事を提供して、子どもの健康増進や発育阻害の改善を図る、貧富の格差をなくす、という建前だが、これは実施開始半年も経たずしてすでに崩壊している。 ことの発端は、昨年2月に行われた大統領選挙の選挙運動で、プラボゥオ・スビアント候補がこのプログラムを看板政策として掲げたこと。経済成長、雇用創出、地域経済活性化、貧困撲滅、健康医療、さまざまな政策について質問される度に、P大統領はこの政策一本でどの問題も解決できると強調してきた。 インドネシアは、千もの島々から構成される島国、ターゲットとする貧困層というのは、物流が困難な地域であるし、一カ所で大量に調理して配膳するシステムは難しい。できるとすれば、既にある学食や学校近辺の食堂に支援金を渡すことだが、学校の必要経費ですら満足に管理できていない現状を考えると、実現不可能なのでは?と言われていた。 当初の計算は一人当たり15000ルピアで全国民が対象、見積りは5年間で総額450兆ルピア(約28億ドル〈約4兆円〉)という、当時ヌサンタラ都市移転のために必要だと言われていた金額にも匹敵する莫大な金額。貧困者に食事を提供しても食べたら終わり、それよりも雇用創出できる政策に予算を使うことが緊急なはず、国内の経済専門家らは前代未聞の超愚策、自滅策だと評価した。 選挙運動期間中、対立候補側は、この政策の愚かさを指摘し、貧困家庭の奨学制度、教員に十分な給与を支給して質の向上を図るとか、職業訓練など、直接的に雇用を創出できるプログラムを強調するだけで勝てるほど、国民の支持を得ていた(得て当たり前のようにみえた)。 しかし、その選挙結果は予測と全く正反対の無残な結果に終わる。一番人気と言われていた候補者は、史上最低の得票数で敗退した。結果として(どんなに疑わしい方法で勝利を決めたにしても)P大統領が当選したからには、もう問答無用で自動的に実施されるという状況にある。 ”当選という形でこのプログラ...

あるあるでは済まない途上国警察 一線を越える

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貸し出した車に取り付けてあったGPSからの信号が途絶えたのに気付いたのは、オーナーの長男だった。3個装着したうち2個の信号が一度に消えたということは、故意に取り外されたに間違いない。残った1つのGPSの信号を頼りに、自動車レンタル店のオーナーと二人の息子、従業員数人が2台の車に乗って追跡に出かけたのは年が明けたばかりの夜10時過ぎだった。 問題の車が走行しているのを見つけたのは隣県の路上だった。”この車はだれのものですか”とオーナーが話かけると、乗っていた二人のうち一人がピストルを取り出し”どけ、俺たちは海軍だ。どかないと撃つぞ” と脅してきた。 ”穏やかに話しましょうよ” レンタル店のオーナーは、この商売を始めてから十数年。もう何度も乗り逃げされそうになった車を追跡しては取り戻す経験を持つ。決して高飛車に怒鳴りつけたりしたわけではない。 穏やかでない雰囲気に、やじ馬が集まりはじめたそのとき、後方から黒い車が近づいてきて従業員らの乗る車に追突。そのどさくさに紛れて、問題の車も走り去っていった。そして深夜のカーチェイスが始まった。 相手は拳銃を持っている。途中、オーナーと息子たちはグーグルマップで最寄りの駐在所を探して立ち寄り、事情を説明し、相手は銃を持っているので同行してくれるようお願いすると、夜勤中の警官は、手続き上の理由で同行を拒否。署長に電話で尋ね、だめだと言われてもいたようだった。 そこでオーナーは、警官にものを頼むときの常識”お疲れ料”を差し出したが、それでも警官は断り、自分たちで探すよう促した ”ここへ連れてきたなら手助けできる。拳銃だって本物とは限らない”とまで言い放った。 残ったGPSが外されてしまえば車を取り戻すことが出来なくなる。警官の助けがなくても、オーナーと従業員らは追跡を続けた。例の車が高速道路のレストエリアに入ったことをGPSが示したのは明け方4時近く。従業員らは徒歩で、レストエリア内に駐車しているはずの問題の車を探し、コンビニエンスストアの前でそれを見つけた。 運転手は、仮眠をとっているらしい。従業員らは男を取り囲み、拳銃を差し出すよう詰め寄っていた。その時、背後から突然の銃声。少し離れたところに例の、あの黒い車が駐車していた。銃弾の音は4発5発。その一つが、オーナーの次男の耳たぶをかすめ、全員が散り散りになって逃げたので撮影していた画...

賞味期限3カ月カビない格安菓子パンの需要とは

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 一年近くも車の中に放置しておいた食パンにカビ一つ生えていなかったことが少し前に日本で話題になっていたが、インドネシアには賞味期限が3カ月という超長持ち菓子パンが売られている。 2017~2018年に創業した中国資本の二企業、それぞれ東側島嶼地域向けにはOkko、ジャワ島向けにはAokaというブランド名で、インフルエンサーを利用して知名度を上げ、パンデミック騒ぎの中で急成長した企業の一つ。 窒素ガスが充填されたしっかりとした個包装に高級感を覚える人も多い。 原材料表示欄には材料名がびっしり。 ジャムの色については閲覧注意レベル? 値段はたったの2000ルピア(20円くらい)と、大手のサリロティ社の同じようなパッケージのサンドイッチパンの価格6000ルピアと比べてはるかに安い。競争の激しい都心の大手スーパーマーケットやコンビニではなく、地方の伝統的な市場に安価で賞味期限の長い菓子パンを送り込む戦略は大成功した。 インドネシアは島嶼部が多いので船で輸送するのに時間がかかるし、家の軒先に商品を並べてコンビニのような機能を果たしている小さい食料雑貨店にとっては、賞味期限が長いのは大変都合がいい。加えて漁村では船で何日も漁に出かける漁師さん用に菓子パンがまとめ買いされるという需要が常にある。 工場生産のパン最大手、サリロティ社の賞味期限は5日。同じくらいの値段なら、地元のホームメイドのパン屋さんの方が売れていた。しかし、アオカやオッコが市場に入ってきてから、価格競争力を失い、これまで地方経済の担い手だったパン屋さんはビジネスを続けることが難しくなった。 ”賞味期限3カ月というのはおかしいのではないか” 最初に声をあげたのは消費者ではなく、地方の商工会だった。SGS(国際的な製品認証機関、試験ラボサービス)に、両社の菓子パンのサンプルを持ち込み、検査したところ、アオカ235mg/Kg オッコ345 ml/Kgの デヒドロ酢酸ナトリウム(Sodium asetro ahidasetat )が含まれているという結果を得た。 インドネシアでは法律で使用が禁止されている防腐剤だが、二社ともBOPN(国家医薬品食品監督庁)の認証を受けている。 それならば、二社とも即取り消しにすればよいことだが、営業停止、商品回収となったのはオッコだけ。食品監督庁の説明によれば、アオカに...