海外で大人気の日本のアニメナルト。天皇陛下のインドネシア訪問の際にも、陛下がジョークのネタにしたことで話題になった。そこで、アニメナルトが、インドネシアの若い子たちに人気がある理由は何なのか色々読んでみたところ、”一生懸命にやれば夢が叶えられるところが好き”というあまりに素直な答えばかりであまり深堀りはできなかった。
ただ、論理的な分析力で人気の教育系YoutuberのG先生(本職は学校の先生)が、とても興味深い異色な考察をしていたのを見つけたので、そちらの方をざっと紹介してみたい。
日本のアニメには、幼い頃の悲惨な経験から始まるものが多い。主人公ナルトは幼い頃のけ者にされたことから、トップ忍者になって自分の存在を認めさせることを夢としている。またそのライバル役サスケも、一族を皆殺しにした兄への復讐の思いがある。
G先生は、これらの憎しみを燃やすことを燃料にして成長していく少年たちの姿を、ペリー来航以降の日本の近代史になぞらえる。誇り高い独立を破り、無理やり開国させられた屈辱。そのせいで260年も続いた江戸幕府まで崩壊してしまった。誇りを取り戻すため、急速に経済をさせざるを得なかった第一次大戦前後。
その精神は第二次世界大戦の敗戦後も失われていなかった。急速な復興と経済成長期、しかし70年代、80年代の絶頂期のあたりから、失速してしまった。親たちの世代は、ゼロからはじめて豊かになったことを誇りにし、子供たちにも同じようにやりなさいと教えたが、もう燃やす燃料がない。
そんな世代から生まれたアニメのストーリーでも、前述の日本人特有の精神の枠組みは登場人物の思考パターンに根強く残っていることがわかる。それと、燃やす燃料のないという現実の間のギャップ、それこそ現在の日本人が抱えるストレスなどの様々な問題、そして経済成長の鈍化につながっているのではないか。
そして、G先生は、イスラム教徒としての教えも引用し、”憎しみを抱きつづけることは決して良い結果をもたらさないことの見本として日本のアニメから学ぶ必要がある” と結論付け、日本人の抱える問題が増々悪い方に向かわないように祈ろうという視聴者に呼びかけるという内容のトークだった。
ひと昔前、世界のヒーローとして君臨していたスーパーマンやバットマンの時は、アクションやユニフォームのカッコよさと一緒に”正義のための暴力の正当化””金持ちイケメン”というメッセージも受け取っていたのだとすると、この日本アニメの世界的流行は、お話の面白さや忍術などと一緒に、どんなメッセージを配っているのだろうか。
因みに、インドネシア発の漫画や小説で面白いのがあるかというと?まだ聞いたことがない。何故ないかという考察があったら面白いかもしれない。