【報道されない大災害】アチェ・スマトラ”超巨大同時多発地滑り”で村がいくつも消えた
11月末に発生したアチェ・スマトラでの大洪水・地滑り災害のニュースは、
日本では「異常気象の激しさ」というカテゴリーでしか報道されていないようだが、
国内では「異常気象はきっかけに過ぎず、最大の原因は
”無秩序な森林開発にある”という議論が高まっている。
スマトラは、火山灰質の山を覆う熱帯雨林の森におおわれた崩れ易い地質。
これを天然の樹木の根が支えることで維持されてきた自然体系が、
ここ数年、急激に破壊されている。
パーム油農園への転用、鉱山開発...
パーム油を原料としたバイオディーゼルは、
CO2 削減効果があるとして、地球温暖化対策の
グリーンエネルギーとして注目されているが、
じつは、油ヤシの木は、天然の樹木とは全く違い、
根が浅い上に、水を大量に吸収する性質があり、
天然の樹木を切り倒した後、油ヤシを植えれば、
肥沃な土壌を、乾燥した不毛の地に変えてしまう。
それが分かっていたので、オランダの植民地政府さえ、
農園として切り開くことをしてこなかった土地だ。
ところが、ここ数年、政府は、国産のパーム油を原料とした
バイオ燃料(バイオディーゼル)を、
ディーゼル燃料(軽油)に混合することを義務化する
という政策を推進し、
その需要のおかげで(その前から森林破壊が問題になってはいたものの)
熱帯雨林の森のパーム農園への転用が激しく促進された。
スマトラ島は地図で見ると、そのほとんどが緑色だが、
じつは既にその7割がパーム農園や鉱山開発地に転用されてしまっている。
信じ難いのは、絶滅危惧種種スマトラ象の住む、国立自然公園、
ユネスコの世界遺産として認定されている森林にまで、
政府が開発許可を発行していることだ。
さらに、”違法伐採の取締りも機能していない”
というよりむしろ、
”反対派の住民や活動家を取り締まるために”機能している。
そんな、積もり積もった悪行。
”近い将来、たいへんなことが起こる”という警告は、
何度もあったが、その甲斐もなく、
むしろ2025年に入って、政治的な意図が絡んだ利権分配の道具としての、
無秩序な伐採が加速していた。
法律では、切り開いてはいけないことになっている
山の上や川の傍で、大規模な伐採が(こっそり)行われていた。
このことは、
土砂に運ばれて、川に流れ込み、
麓の村を直撃した大量の木材が、切りそろえられ、
マーキングされたものだったということから
誤魔化しようがない。
大量の木材を浮かべた激しい川の流れは、
川沿いの村々を丸ごとさらって海に達し、
そこに集落があったことの跡形も残さないほど破壊された。
これまで一度も氾濫したことのなかった山間の川は
そのとき、水面が10メートルも上昇したという。
被害の詳しい状況について、公式な情報は、
現在のところ、死者・行方不明者1350人。
このデータが、もう何日もあまり変わっていないということは
実は、捜索作業が進んでいないことを表しているのかもしれない。
こういうときのための国家機関、
災害対策庁の長官は、災害発生当初から
「災害は、SNS上で騒がれているだけ、2004年の津波災害や
パンデミックと比べれば”国家災害指定”するほどのものではない」
などと発言して、ヒトデナシっぷりを晒すも
国民の大反発を食らったくらいで態度が変わるわけでもなく、
救助活動は、各地方政府での対応ということになっていようだ。
大統領イチオシの政策ために、
災害対策費が大幅に削減され、
地方政府の予算も削減されている。
復旧費用の援助の話をする前に、
”国家機関を総動員した一刻も早い国家災害指定が必要なのではないか?”
と訴える声は高まっているが、政府が方針を変える気配は全くない。
それどころか、海外からの支援の申し出を断ったり、
インフルエンサ一らが寄付金を集めて、
物資を直接届けようとする活動さえ、阻害されているという。
”2004年の津波災害では餓えで亡くなる人はいなかった。
被害そのものは、2004年の津波よりはるかに大きい。
流された沢山の車の中に遺体があるのはわかっているのに
出してあげることさえできない…”
状況について、情報を発信している
アチェだけでなく、北スマトラ州、西スマトラ州も
同じような状況なはずだけれど、他の州ではどのような状況なのかは
あまり伝わってこない。
一方で、「森林破壊など気にするな。パーム農園業開発は重要だ」という
大統領の発言が注目された。こんな未曾有の大災害の原因が
森林破壊によるものだと議論されている最中にである。
一応、大統領自ら足を運んで現地視察に行ったり、対策会議を開いた
というようなニュースはあっても、大統領が本気でこの大災害に
取り組もうとするかどうかということには疑問がある。
その理由は、実はこの大災害を引き起こした責任が、
政府高官にあるからだ。この大災害発生の原因となった大企業のリストによれば、
大統領を含む政府の重要人物の多く、家族やその支持者らの企業が、
この自然保護林での一企業につき ”シンガポール国土の何倍”という
驚くような単位の土地を占有しているということが分かっている。
被害を拡大させたのは、違法伐採やアブラヤシ・プランテーション
のための森林破壊が原因ではないかと追究されたことに対して、
森林省の高官は、「流出された木材は、自然に倒れたもので、
切り出されたものではない」と断言。
こんなレベルの議論がつづくばかり。
政治的な理由だけで、こんな人物ばかりが重要なポストに
座っていることこれこそが、すでに大災害のはじまり。
大災害にも大々的に報道されるものと、
報道されない大災害は、確かに存在する…
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