婚外交渉禁止の法案改正その後
2022年12月6日、インドネシア国会で可決された刑法改正法案について、結婚していないカップルの性交渉や同居を禁止する法律が含まれていることが海外メディアから批難され、観光客が来なくなるに違いないなどと大きく報道されていたが、実はその後、パンデミックによる外出制限が解除されてから欧米人の観光客が増大した。
戦争から逃れるため、又は、本国での生活費を節約するために、長期滞在しようという目的の外国人が押し寄せて、外国人による犯罪や詐欺事件が頻発していた。(その一方で、中国人団体旅行は戻らなかった)
インドネシア人の大多数を占めるイスラム教徒など、子供の頃から宗教教育を受けているので、モラルをとても大切にしている。勿論、地元バリの人たちは自分たちの土地であるだけに、地元の人たちの文化を無視した行動をとる外国人に対し、怒り心頭、敵意さえ抱いている。
アジア人だから、面と向かって文句をいうことが出来ないのは日本人と同じ。上半身裸(女性はビキニ)でオートバイに乗っていたり、道端でイチャついてでもいようものなら、撮影され拡散される。海でヌードを自撮りしていた欧米人女性が強制送還されたこともある。
昔の欧米人観光客はよかった。地元の人をガイドに雇ったり車をレンタルしたりしたから地元民の収入にもなったが、最近の欧米人観光客はより節約するためオートバイをレンタルして自分で運転する。観光地の道は、欧米人のオートバイでいつも大渋滞、マナーの悪い人が多く、地元の人には何の役も落とさない。
全国的にお笑い草になったのは、海辺の縁台で野宿したり、軽トラックの荷台にすしづめになって移動していた欧米人。安上がりで効率的だとでも思ったのか、それが現地人にとって、どれほど恥もプライドもない行為に見えるか彼らには理解できないに違いない。
同法案改正について、当時の法務人権省副大臣(後に収賄で辞任)による説明を記載しておく。
改正法案は231頁もあって、婚外交渉の条項よりももっと重大な条項がありそうな気もするが、とりあえず今話題になっている婚外交渉の件と大統領侮辱罪について、大臣や副大臣のトークから纏めてみた。
1.婚外交渉の条項について
改正される背景
改正前の婚外交渉についての条項に基づいて自治体等、特に宗教色の強い地域では、ホテルなどの宿泊施設などで直接取り締まるというようなことがあり、問題になっていた。新法案では、訴える権利を配偶者と子供に限定し、第三者が関与出来ないようにした。極端な解釈による行動が合法化されないよう配慮するものである。
何故そんなプライベートなことを問題を法律で定める必要があるのか?
世界的にリベラルな風潮が浸透しているが、インドネシアは国家原則で宗教を重んじるとうたっている国である以上、法律で明確に規定する必要がある。
犯罪となる場合について
訴えなく逮捕されるようなことはない。訴えを起こす権利は配偶者、未成年者の場合は家族であり、訴える場合は、両者を同時に訴えることになる。一方だけを訴えることは出来ないのでより垣根が高くなる。
2.大統領・政府の侮辱罪について
改正される背景
犯罪の対象になるのは個人的なことに関する誹謗中傷についてのみであり、批判を禁じるものでないことは明記されている。改正前は、侮辱という多様に解釈できる言葉が使われていたため、国家公務員や為政者個人によって、この条項が安易に利用されることが多々あった。
適用
改正後、大統領副大統領以外は、この条項を利用することは出来ず、行政機関全体としてその長が正式に訴える場合に限り適用される(それ以外は個人として名誉棄損を訴えることができる)加えて電子媒体や公共の場を利用して誹謗中傷がなされた場合については刑がより重くなることも新しく規定された。
改正刑法法案の原文 https://bphn.go.id/data/documents/draft_ruu_kuhp_final.pdf