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日本軍統治下で売国奴と呼ばれたスカルノ大統領

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 スエズ運河が開通してから、ヨーロッパからアジアへの船旅はより身近なものとなっていたようだ。オランダ語らしい船名のついた大型船から続々と降りてくるたくさんの西欧人たち。男性は帽子に白いスーツ、奥様方は、ワンピースに白手袋をつけた奥様方たち、といった正装で、お互いのビジネスの話などを交わし談笑している。植民地政府に赴任になった公務員や、輸出業者、農場や鉱山の経営か。すでに社交界の雰囲気だ。 船を降りたオランダ人は、オランダ人専用の邸宅街でオランダ人だけのコミュニティーで暮らす。子供にはオランダ語の学校、大人たちには社交クラブがあり、テニス、ゴルフ、遊戯施設やプールも完備されている。邸宅内の中庭で、お誕生会をしている子供たちの映像が可愛い。女の子は、ふわふわのワンピースに大きなリボン、男の子は半ズボンにサスペンダーといった服装。その頃のオランダ人の子供たちがとても大切に育てられていたのが伺われる。 POTRET KEHIDUPAN ORANG BELANDA DI INDONESIA YANG PENUH KEBAHAGIAAN DAN CANDA TAWA TAHUN 1930 -1940an #guruinteraktif #sejarah #penjajahanbelanda #hindiabelanda #sejarahindonesia #orangbelanda #orangeropa Video ini memperlihatkan kondisi riil kehidupan orang ... youtu.be そんなオランダ人たちのインドネシアでの生活を180度変えてしまったのが、日本軍による占領だ。植民地政府高官と軍の一部は、事前にオーストラリアに亡命していたが、大部分の民間人は残っていた。オランダ軍が撤退したことで、白人とみれば現地人から襲撃を受ける事件も発生しており、全ての西洋人はキャンプに収容されることになる。(オランダ人以外の西洋人もいたが、ドイツとイタリア国籍者は同盟国であるということからキャンプには入れられなかった) アジア人優先の方針により、日本軍は行政及び民間のオランダ人管理職者を全て排除し、現地人を昇格させて配下に置いた。そして、オランダ人の成人男性は全て強制労働員(ロームシャ)として、男性専用のキャンプに集められ、その妻...

国民的英雄スカルノ大統領はここから始まった

 日本の終戦記念日の2日後が、インドネシアの独立記念日。広域に散在する島々を領土とし、様々な言語や歴史的背景を持つ人々(それぞれの民族がそれぞれの天皇を持っていると考えるとわかりやすい)が、一つの国を目指して団結し独立を勝ち取るまでの流れを辿ってみる。領土や民族、考え方の違いのために、繰り返される紛争や戦争が世界中にどれだけ沢山あるかを考えるとき、また、言論統制が強まる動きに息苦しさを感じる現代だからこそ、共有できるものがあるように思う。 建国の父スカルノ初代大統領が、民族主義活動に身を投じることになったエピソードの一つに、高校時代、同級生のオランダ人の女の子の家に結婚を申し込みに行ったら、彼女の父親から散々に貶められて罵詈雑言を浴びせられたことで、人種差別を実感した、というエピソードがある。20世紀初めのオランダ植民地政府は、倫理政策の一環として、現地人向けには職業訓練学校を作り、また現地人官吏の子弟男子限定でオランダ人の子弟のための学校に通うこと許可したり、オランダに留学する機会を与えたりという試みがあった。 植民地政府主導による強制栽培政策で、商品用作物ばかり植えさせられた結果、現地人が大量に餓死したという時代はすでに過去のこと、強制栽培政策で得た莫大な富によってオランダ本土では産業革命が完成していた。そのことは植民地においても変化をもたらす。 資本主義に基づいた農園業や炭鉱業などでひともうけしようとするオランダ人が大量に流入してくる一方で、現地人は貨幣経済の犠牲者へと堕ちていく。理不尽な借金のかたとなって、安価な労働者として劣悪な環境下での強制労働や無給労働、一方的な懲罰と差別、子女の誘拐や暴行。 政治には一切参加させてもらえない無力な現地人が、そういった問題について意見を言ったり抗議したりする団体を結成することは、倫理政策の下でも許されてはいなかった。そこで、イスラム教徒の商業団体や、医師らによる奨学金援助活動団体といった資本主義なら禁じようのないコミュニティーの結成が認められると、会員が爆増した。本来の実務的な情報交換だけにとどまらず、訴える場のない社会的な問題を議論する場としても発展していく。 何百万人もの会員が集まり影響力を持ち始めると、植民地政府からの干渉が入り、政府に従おうとする側と、反発する側に分かれて分裂。ついに後者(共産党系)が武装...