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日本案を蹴ったインドネシア政府は、後悔しているのか?バンドゥン高速鉄道

長年、日本と進めてきた高速鉄道を取りやめて
中国案に乗り換えたバンドゥン高速鉄道。

高い金利、無理な返済計画、採算の不透明性
それでも、「国家予算を一切使わない、早い」
というのが中国案件を選んだ理由だったはず。

ところが蓋をあけてみれば、
実態は、当初中国側が完成を
約束した2019年になっても、
土地の買収すら済んでいなかった。

しかも
「大切な国民のお金は一切使わない」と
繰り返し強調していたジョコ大統領自身が、
大統領令を改正し、あっさりと国家予算の投入を
決めてしまった。

その時の言い分は、コロナ感染症拡大の影響で
工事が大幅に遅れたということだった。

「国家予算からの資金投入」
「政府による債務保証」が合法となり、

イエスマンばかりの国会が、
不可解な予算をやすやすと通過させることは
もはやいつも通りの光景だった。

ここで、根本的に疑わしいのは、
そもそもインドネシア政府がバンドゥン高速鉄道で、
「採算が取れるかどうか?」
など最初から気にかけていたのかどうかということだ。

予算不足の主な原因は「土地買収の遅れ」
と説明されていたけれど、
それは、大幅なルート変更の調整が
行われていたことと深く関係している。

最も利用者が見込める街の中心部を通る
当初の計画を早々に撤回し、

既存の路線との接続もなく、
一から開発の必要な、都心部から離れた場所に
駅をつくるという変更だ。

この時点で、「1日6万〜7万人」という、
当初から非現実的だった利用者予測は、
さらに、大幅に下方修正されていなければ
ならなかったはずだ。

しかしそういう都合の悪い数字は曖昧なまま
国家予算の投入が強行された。

さらに、ルート変更の表向きの理由は、
「コストを抑えて、工事の遅れを取り戻す」
ということだったけれど、

本当にコストを抑えるための
路線変更だったのかどうかということにも
疑問が呈されている。

汚職撲滅委員会の捜査で
この路線変更の情報を先に得ていた
一部のブローカーや投機家が新予定地の土地を
既に買い占められていたことが
明らかになっているのだ。

特に悪質なのは、
「元々国や国営企業などの所有する土地の名義を
操作して、ブローカー経由で、国が買い戻していた」
疑いまであることだ。

誰が、この土地買収で大儲けしたのか?
国家プロジェクトの土地買収であれば
誰が・どの区画を・いつの時点で取得し、
いくらで売却したのかという資金や
名義のフローを辿ることは、
不可能なことではないはず。

しかし現在、この「汚職撲滅委員会」
という独立の捜査機関は、
度重なる法律改正で既に独立性を失っていて、

大型案件は政治的な意向や大統領の一言でもなければ
踏み込むことが出来ない立場にある。

ジョコ大統領はそういう意味で
抜群に用意周到だった。

そんな政府が、バンドゥン高速鉄道が赤字、
採算が取れず負債が嵩んでいるから、
「日本案にしておけばよかった」
と反省するだろうか?

むしろ、「おいしい案件だった」
と考えているかもしれない。

少なくとも、あのときの少なからぬ汚れた金は、
現在の権力構造に貢献している。

だからいくら疑惑が存在しても、
追及されたり責任を問われることがないのだ。

確実に失ったものは国民の信頼だけに過ぎない。
だが、彼らにとってのその信頼の喪失など
大したことではないのだろう。

しかし罪を追求されないために、
金を集め続けなければならないという
悪循環から、決して抜け出すことはできない。

2024年に任期を終えたジョコ大統領から、
プラボウォ大統領に交代したが、
相変わらず、誰も裁かれないまま。

但し、こういった手口そのものは、
ジョコ大統領が退任後になってから
次々と暴かれ、今や誰もが知る重大な
関心ごととなっている。

しかし、いつまで待っても、肝心の法の執行が
なされる気配はない。

報道も茶番、逮捕も茶番、裁判も茶番、
プラボヴォ大統領は「汚職は地の果てまで追いかける」
と演説では、期待させるようなことを
繰り返し言いつづけてきた人物だが、

近頃ではようやく「口先だけで何もするつもりがない」
という評価が多数派を占めるようになった。

昨年の予算会議でこのタブーな案件に、
堂々と意見を言った財務大臣がいた。

「国家予算は打ち出の小槌ではない。
 
何でも財務省やAPBN(国家予算)に
持ち込まれては困る」。

それは、現政権が強力に進めている
政府ファンド「ダナンタラ」という新しい制度
に対する皮肉。

ダナンタラというのは、
国営電力やプルタミナ石油など、数少ない
「確実に利益を生む国営企業」
の資産と利益を集めて立ち上げられた
大統領直轄の投資ファンド。

(巨額の国営企業の資産を一手に握る割には、
責任の所在が不明で透明性のない
「ダナンタラ」の利益を)
中国側への借金返済に回せばよいことではないか?
というのが彼の意見。

確かに当初のB toBビジネスにおける返済プランでも
既にダナンタラの傘下に纏められた
国有企業の利益から返済することに
なっていたはずなのだ。

この発言が、いかに国民の熱狂を呼んだか
ということについては、
以前、ブログに書いたことがあるが、
じつは、その痛快劇も長くはつづかなかった。

プルバヤ財務大臣の、このカッコイイ発言は、
その直後に、プラボウォ大統領の直々の
「政府が全面的に責任を持って払う」
という発言によってあっさりと撤回されている。

結局のところは、バンドゥン高速鉄道の
巨額の負債を抱えた国営建設企業wikaを、
財務省のファンドビジネスの
傘下に組み込む形で
財務省が借金返済を引き受けることになった。

この国営建設企業WIKAは、
バンドン高速鉄道案件を請け負う前までは、
職人気質の優良企業として知られていた。

この案件のためにジョコ政権下で、
合弁させられ、ずさんな見積もりや、
ルート変更、用地買収の混乱、
巨額のコスト超過を押し付けられ
経営破綻へと追い込まれた揚げ句、
切り離された悲劇の企業。

遠回りした挙句に、結局は国民の税金で
穴埋めさせられているじゃないか
という批判に対しプルバヤ大臣は

「大統領の言うことだから聞くしかないじゃないか」
と苦々しく答えていた。

一時期は、ヒーローとして持ち上げられた彼も
結局のところ、彼は「大統領からの指示に従う」
イエスマンであり、
国民の不満をかわすための、
優秀なガス抜き役でしかなかった
そんな評価に落ちついた。

ところが、それからわずか、数週間後のこと

そのプルバヤ大臣が、会議の途中で
思いもかけない、大統領からの電話一本で
免職されることになる。

予算会議で「ダナンタラ」の予算を
削減しようとしたのがいけなかったのか
それとも、汚職が疑われる税務官を大量に
人事刷新したのがいけなかったのか。
様々な憶測がある。

いずれにせよ一国の財務大臣が、
電話一本で免職されてしまうのは、
あまりにも異常なことだ。

そして彼の後任には、さらなる
イエスマンが据えられた。
それは、前任者の時代から
副大臣を務めていた人物。

就任のあいさつでは
「大統領のプログラムが最優先」
と声高に強調、プルバヤ大臣の決行したばかりの
大幅な人事異動をあっさりと撤回した。

落ち込んだ経済を立て直すには、
本当に能力のある優秀な人物が、
財務大臣になってほしいもの。

しかし「国家の財布(財政規律)を守ろうとして
ブレーキを踏んだ閣僚はトップダウンの一声で飛ばされ、

後任には『大統領のプログラム(政策)最優先』
を誓うさらなるイエスマンが据えられる」

この構造は、まさに「健全な財政・経済管理」という
私たちの一般的なイメージとは大きくかけ離れている。

インドネシア政府が日本を蹴って
激しい競合の末に中国案を選んだことについて、
「後悔して反省している?」
そんなことはありえない。

むしろ、何かまた新たな巨大インフラ計画を
立ち上げて、再び巨額の権限と利権を
握る立場に立つことを虎視眈々と狙っている。
というのが実情ではないかと思う。


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