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赤道付近の砂漠化ー日本で豪雨頻発の原因はエルニーニョだけじゃない

8月から9月にかけて
千葉や名古屋などで発生した集中豪雨。
まるで東南アジアかと思うような、
凄まじい豪雨による大規模な水害が、
立て続けに発生している。

ニュースでは、
「エルニーニョの影響で、温かく湿った空気が
連続して日本列島へ流れこんでいる」
と説明されるこの状況。

しかし、エルニーニョ現象というのは、
地球温暖化のせいで発生するようになったわけではなく、
昔からあるものだということを
どれだけの人が知っているだろう。

エルニーニョというのは、
ぺルーの漁師たちがクリスマスの頃に
沖合の海面水温が高くなる現象を、
キリストの誕生になぞらえて呼んだことに
由来しているのだそう。

エルニーニョがなぜ発生するのか
その明確な理由は分かっていないけれど、
地球温暖化が問題になるより、ずっと前から
存在していた現象であることは確かだ。

非常にわかりにくいのは、
なぜ、ペルー沖で海水温度が高くなると
東アジアで豪雨が発生するのかということ。

それは、風や海流の循環のシステムと
関係している。

ノーマルな状態では

大平洋の赤道付近では、地球の自転との関連で、
東から西へ向かう風、貿易風が吹いている。

この風に押されて、大平洋の赤道付近で暖められた
海面付近の暖かい海流は、西へ西へと運ばれていく。

そして、東から運ばれてきた
大量の温かい海水が集まるのが

大平洋の西側、インドネシア周辺の海域。

ここで温かい海水から上がった
大量の水蒸気が、上昇気流に乗って
積乱雲が発達する。

短時間に大量の激しい雨が
ザーと降って、また青空が広がる。

これが私たちの知っている熱帯雨林気候。
ノーマルな循環。

ところが、エルニーニョが発生すると、

ペルー沖の温かい海流が、
西へ運ばれる循環が弱くなり、
ペルー沖で大雨を降らせてしまう。

一方で、温かい海流が運ばれてこなくなった
インドネシア周辺では、
積乱雲を発達させる上昇気流の代わりに、
下降気流が強くなる。

上から下へ吹き付ける流れで、
海から上がった水蒸気は散らされてしまい
何日も雨が降らない乾燥が続き

赤道直下なのに雨が降らない
という状態になる。

インドネシア周辺で降らなかった雨はどこへ行くのか?

インドネシア周辺で、
積乱雲になれなかった
水蒸気を含む空気は、

大気の大きな循環の中で
別の地域へ移動していく。

インド洋の赤道付近でも、太平洋と同じように
東から西に向かう風が吹いている。

エルニーニョによって大気の循環が変化すると、
インドネシア周辺から西へ向かう
水蒸気を含んだ空気の流れが強まって

インド洋の西の端にあつめられ、
豪雨を発生させる原因になる。

近年、大雨による洪水が大きな被害を
うけているのがソマリアだ。

つまり、エルニーニョの影響とは、
単にペルー沖の海水温が上昇する
というだけではない。

大平洋からインド洋にかけて広い範囲で
影響する地球規模の大気と海の循環の変化なのだ。

そして、その影響は日本にもやってくる

インドネシア周辺で積乱雲が発達する代わりに、
下降気流が強まると、
フィリピン上空で、強い高気圧が発達する。

日本付近で発達した前線の端が、
この高気圧と近づくと、暖かく湿った南からの空気が
日本列島に流れ込んでくることになる。

これが、エルニーニョの時に日本で
豪雨が起こるときのメカニズム。

日本の天候には他にも様々な要因が影響しているので、
エルニーニョが発生したら必ず
日本で熱帯性の豪雨が降る。
というわけではないものの、

以前にはなかったような豪雨が
発生しやすくなっているということが言える。

なぜ、その影響が深刻になっているのか?

ここで考えたいのは、
エルニーニョそのものは
地球温暖化が問題になるより、
ずっと前から存在していたということ。

昔と今では、何が変わってしまったのか。

その重要な原因の一つとして考えられるのが
インドネシアの熱帯雨林の消失だ。

熱帯雨林は、降った雨を土壌に蓄え
少しずつ川に流し、さらに植物の蒸発散によって
水分を大気へ戻している。

異常気象は、水循環の重要な一部だった巨大な
熱帯雨林が既に機能を失ってしまったということを
示しているのかもしれない。

広大な熱帯雨林が国土の多くを占めるインドネシアでは、
鉱山開発やアブラヤシ農園の拡大などによって
森林の消失が急速に進んでいる。

インドネシア環境・林業省などによれば、
国土の半分はまだ森林に覆われたままずっと変わっていない。

しかし実際は、「森林面積」とされている土地の
全てが手つかずの原生林ではなく、
原生林が伐採された後、アブラヤシ農園などに
転換されている所が多い。

特に、かつて島の殆どが緑で覆われていたスマトラ島、
カリマンタン島での森林消失が著しい。

グーグルマップでみれば、緑色には見えるが、
拡大してみれば、規則的に植林されている箇所ばかり。

インドネシアの森林問題はいつも、大災害が起こってから
広く知られるところとなる。

「経済政策の目玉」グリーンエネルギー推進政策

アブラヤシからとれるパーム油を軽油に混ぜて、
二酸化炭素の排出を減らし、
石油輸入への依存を減らそうという。

前政権から始まり、現政権が経済政策の
目玉の一つとして推進しているのが
バイオ燃料政策。

バイオ燃料は、通常の軽油よりも
抽出コストが高いため、
政府が補助金などを使って普及を後押しし、
さらに、軽油の一定割合に、バイオ燃料を
混ぜることを義務化している。

#Kebijakan Biodesel B50 

これは、事業者にとっては巨大な利権。
確かに、この政策と連動して、
アブラヤシ農園を拡大できる土地を
巡る争奪戦が特に著しくなっている。

環境団体のデータによると
2023年の森林減少は、約25万7,000ヘクタール。
2024年には約26万2,000ヘクタール。

そして2025年には、約43万3,800ヘクタール
前年から実に66%も増加している。

そしてその森林消失が特に大きな問題となっているのが
カリマンタン島だ。

大規模な森林火災

日本で連日、豪雨の大災害のニュースが
報道されていたのと同じころ、

こちらでは、カリマンタン島西部で発生した
大規模な森林火災のニュースが
連日報道されていた。

衛星画像で観測された火災のホットスポットは
数万件規模。約3~5万ヘクタール
(東京23区に相当する広さ)が消失したという。

そして、この火災をさらに厄介なものにしているのが、
「泥炭」

熱帯雨林が消失した後の地面には、
泥炭(石炭になる前の枯死した植物の遺体)
の層があって、

火災は、地上だけでなく泥炭層までも
焼き尽くすため、地上の炎を消しただけでは
終らない。

そして、その煙は、風にのって隣国にも
煙害を運ぶ。

マレーシアやシンガポールで
煙害に苦しむ人たちの怒りが収まらないのは
この火災が、「人為的に発生したものである疑いが
高い」ということだ。

環境団体による衛星データや環境NGOは、
火元が、政府が使用権を発行しているエリアに
集中しているということを指摘している。

「野焼き」というものは、事業者にとって
開墾のための、最も安上りで効率的な手段として
知られている。

伐採のための機材も人件費もかからず、
伐採した後のぬかるんだ地面も焼き払われ、
アブラヤシの苗を植えられる状態に転換することが出来る。

例えば、石炭価格が下落したとき、
鉱山会社が収益性の落ちた鉱区を
アブラヤシ農園へ転換しようとするときなど
最も手っ取り早い方法だったりする。

一応、広範囲の地焼きは法律では
禁じられている。
にもかかわらず、何度もこのような
大火災が繰り返す。

その核心には、取り締まる側の政府も警察も
この巨大な利権構造と結びついている
構造がある。

さらに、環境復元のためという理由で、
焼け跡にアブラヤシの苗を植えて
回復させてしまえば、後付けで
合法化される行政管理の甘さが、
火災が繰り返す原因だともいわれている。

やりたい放題やられてきたが

しかし、今回の火災は、
この島の環境が限界に近付いている
ことを示しているのかもしれない。

森林が失われ、土地の保水力も低下したところに、
長い干ばつ、そこに森林火災が重なった。

その影響はついに、この巨大な島を流れる
大河カプアス川を干上がらせたのだ。

これは今までにみたことも聞いたこともない話。
樹齢何万年もの樹木、オラウータンが
ひっそりと暮らす奥深い森。

そこには今や、砂漠かと思うような殺伐とした
光景が広がっているのだ。

#Sungai Kapuas Mengering 

アブラヤシ農園のどこが致命的なのかというと、
アブラヤシは熱帯雨林のような
保水力を蓄えることができないことに加えて、
実を結ぶために、大量の地下水を
吸い上げてしまうということだ。

豊かな土壌を不毛の土地に変えていく
「悪魔の植物」それがアブラヤシ。
そうして作られたパームを、
軽油に混ぜ、トラックや船の燃料に
消費し続ける。

グリーン政策の行きつく先は?

スマトラ島では、アブラヤシ農園を広げ過ぎた
弊害がすでに大災害をもたらしている。

昨年は緩んだ地盤が一気に崩れ落ち、
まるで、最近ネパールで発生したような
町を丸ごと消し去る山崩れが広い範囲で発生している。

(あのとき、真っ先に現地の通信タワーが停電になったため
その時の映像はあまり拡散されることはなかった)

そして残念なことに、開発の波はさらに東へと及んでいて、

最期の森林資源パプア州では、現在、
アブラヤシ農園を拡大する開発に
反対する現地の人達と軍隊の
熾烈な戦いが進行するなか、
着々と、森林は消滅し続けている。

千葉や名古屋での、異常な大雨は、
決して「運が悪かった」わけでも
「仕方のない自然現象」でもない。
日本人はもっと怒っていいはずだ。

地球環境を守るはずの「グリーン政策」が
じつは他所の国の気候変動を促している。

「エルニーニョ」を強調する
ニュース報道の裏にはそんな闇が
隠されているのかもしれない。

まだ土壌が生きているうちに、
アブラヤシが栽培できるうちに
この政策を見直して、生態系に配慮した
作物や本来の植生へと舵を切る。
そんなことができればいいのに。
そんなことばかり考えてしまう。

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